新型コロナ禍での「政治家の言動」に米国医師会トップが注文

Drew Angerer / by Getty Images

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死者の急増が続くなか、米国医師会(AMA)は議員たちに対し、厳しさを増すウイルスとの戦いにおいては政治的意見を脇に置き、科学とデータに集中してほしいと要請した。

AMAのパトリス・A・ハリス会長は特定の議員や党の名前を挙げることはせず、「それぞれの言動において、科学と証拠、事実を肯定して欲しい」と呼びかけている。

ドナルド・トランプ大統領はCOVID-19に対する抗マラリア薬(ヒドロキシクロロキン)の有効性を主張しており、そのことで批判を浴びている。

米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長をはじめとする専門家らは、ヒドロキシクロロキンについては安全性の確認が必要であり、「さらなる臨床試験とより多くの研究、データが必要だ」と強く警告している。

同会長は全米記者クラブが配信したスピーチのなかで、薬の安全性と有効性に関する決断は、「科学者や研究者がデータに基づいて下すものであるべき」だと指摘。次のように語った。

「パンデミック(世界的流行)による先行きの不透明性に直面する私たちに希望を与えるのは、科学と研究、証拠であり、希望的観測やイデオロギーではない」

「医学的に証明されたCOVID-19の治療法をもたらすのは、科学だ。ワクチンをもたらすのも科学だ」

国内最大の医師団体であるAMAには、20万人以上の医師が所属。各州や地方、各専門分野の学会を通じて、政府に対しても相当の影響力を持っている。

米国民は「科学的根拠」に従っている


ハリス会長はまた、「実際のところ、米国はリーダーたちからより多くを、さらにより多くを求めている」と訴えた。

「国民はすでに、証拠に基づいた取るべき行動を取っており、そのために信じられないほどの犠牲を払っている」

「私たちのすべてが必要としているのは、政府や関連機関も同様に、意思決定においては科学を最優先にしていると確信できることだ」

公衆衛生当局の関係者の間には、パンデミックのなかではファウチ所長のような主要な立場にある医師たちが、口止めをされたり、遠慮なく意見を言うことを控えるよう圧力をかけられたりすることもあるのではと懸念する向きもある。

同会長はこれについて、「科学機関は現在も将来も、政治的影響を受けることのない専門家によって率いられるものであるべき」だと主張。「医師、科学者、その他の専門家が自由に、事実と証拠に基づいた情報を伝えることができる環境が必要だ」と語った。

「誤った情報」への警戒を呼び掛け


一方、問題は政府の希望的観測や科学的根拠に基づかない情報の発信だけではない。新型コロナウイルスについては、誤った情報も数多く出回っており、AMAはそれらを一掃するための取り組みにも力を入れている。ハリス会長が誤情報の例として挙げたもののなかには、以下が含まれる。

・アフリカ系米国人はCOVID-19にかかる可能性が低い
・新型コロナウイルスは、ワクチン接種を拒否してきた人たちの考えを変えさせるための新たな方法
・子供はCOVID-19にかからない

同会長は、“技術プラットフォーム”の機能は、「信頼できる情報源から提供された証拠に基づく情報を広め、誤った情報が広まるのを抑えるためのもの」でなくてはならないと訴えている。

編集=木内涼子

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