ビジネス

2020.04.25

生鮮食糧品からクラシックカーまで網羅するJALカーゴの「運ぶ力」

繊細かつ迅速な作業でクラシックカーを運ぶJALカーゴ

2019年11月28日から4日間、福岡県、長崎県、佐賀県、山口県の4県をまたいで29台のクラシックカーが駆け抜ける「JAL Classic Japan Rally 2019 HIRADO」が開催されました。参加車のうち3台は、羽田空港から福岡空港まで空輸されたものです。繊細なクラシックカーの輸送は、熟練の技術を用いたフルオーダーの作業。その模様を通じて、航空貨物を担うJALカーゴの仕事をご紹介します。

お客さまがご搭乗される航空機を輪切りにして見たとき、客室に当たる部分はちょうど上半分です。下半分はすべて貨物スペースとなり、ご搭乗のお客さまからお預かりしたお手荷物のほかさまざまな貨物が積載されます。

JAL貨物郵便本部の藤野学
貨物郵便本部 貨物路線部 国内路線室 路線収入・マーケティンググループ主任 藤野 学

藤野:私たちJALカーゴが空輸する代表的な貨物は、いわゆる宅配貨物です。野菜や果物、鮮魚が多いほか、医療で使われる検体や電子部品などもあります。しかし、完成車を運ぶケースはなかなか珍しいケースです。

特別な車両を運ぶための、特別なプロセス


──JALが協賛する「JAL Classic Japan Rally 2019 HIRADO」に参加する車両の空輸は2018年から始まり、昨年で2回目。特別な車両を運ぶためには、特別なプロセスが求められます。

JAL貨物郵便本部の宮野幸之助
貨物郵便本部 業務部 安全品質管理グループ兼羽田貨物支店国内貨物部アシスタントマネジャー 宮前幸之助

宮前:お客さまのお車を当日航空機に搭載できず、レースに出場できないという事態は絶対にあってはなりません。そこでまずお客さまと事前に綿密な打ち合わせを経て、しっかりとお車を事前確認させていただきました。

藤野:規定内の市販車両の空輸には飛行機に乗せるための『J SOLUTIONS WHEEL』という車両専用のプラットフォームを用います。車両をスムーズに載せられ、車体の骨格であるトーションビーム、ロアアーム、ホイールをプラットフォームと固縛する作業で済みます。しかし、繊細で特別な作りであるクラシックカーの輸送はケースバイケースの対応が求められるのです。

JALグランドサービスの猪飼豊
JALグランドサービス 東京支店教育センター東京教育グループ係長 猪飼 豊

猪飼:タイダウンベルトという、機内で貨物が動かないようにするためのストラップ状の固縛器具があるのですが、大事なお車に傷がつかないように、お車のどの箇所とを固縛するか綿密にお打ち合わせをし、お車と航空機に積載する器材(パレット)を固縛します。

──重量バランスも考えなければなりません。空を飛ぶ飛行機の重量バランスが前後左右で適正になるように、貨物それぞれの重量を事前に把握し、パズルのように配置する必要があります。

宮前:パレットの重量を早めにロードコントロールセンターに渡して、機体の重量バランスがよく、安全な場所に搭載できるように調整しました。

お客さまの下で繰り広げられる、繊細で慎重な作業


──事前のシミュレーションは可能でも、リハーサルはできません。綿密に準備し、当日はお客さまが直接運転して貨物ターミナルにお運びいただきます。

今回の機体はボーイング777-200。小型のセダン程度なら搭載できる積載能力を備えます。貨物用パレットには、特設のスロープを使い、お客さまの運転で載せていただきます。

白いクラシックカーを移動のために台座に設置

猪飼:機体の貨物室への搭載はさらに気を遣います。貨物室は狭く、スペースはギリギリです。機体の揺れや傾きによって車体が内壁と接触しないよう、前後左右のスペースに注意を払いました。

赤いクラシックカーを移動のための台座に設置

──慎重さが求められる一方、定時運航のための迅速さも必要です。こうして搭載を終え、お客さまは旅客ターミナルへ。愛車と同じ便のフライトで福岡空港までご移動されます。

宮前:車両を下ろす際、貨物室のドアが開いてクラシックカーが出てくるのですが、降機前のお客さまがご覧になり、機内がざわついたそうですよ(笑)。
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文=OnTrip JAL

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