ソフトバンクは昨年10月、ウィーワークが新規株式公開(IPO)の計画を断念したことを受け、同社に対する追加支援の一環として、株式公開買い付け(TOB)で既存株主からウィーワーク株を買い取ると表明。だが、先ごろその計画を中止することを決定していた。
買い取りを取りやめた理由としてソフトバンクは、ウィーワークの中国事業の再編が進んでいないこと、規制当局による調査を受けていることなどを挙げている。ソフトバンクとしては、「ウィーワークは追加支援を受けるための条件を満たしていない」との見方だ。
長年にわたってウィーワークの取締役を務めてきたベンチマークキャピタルのブルース・ダンレビー、コーチの元CEO、ルー・フランクフォートは提出した訴状で、ソフトバンクはウィーワークが公開買付けの条件を満たすための努力を妨害していると非難。「明らかに契約上の義務に違反している」と訴えている。
また、「ソフトバンクと孫正義会長兼社長は契約を結んだ直後に、公開買付けを行うべきか疑問視し始めていた」と主張。ソフトバンクは昨年11月にはすでに、ウィーワークの取締役会の支配権を握っており、新たなCEOを任命する権利も手に入れていたと述べている(実際に今年2月に任命)。
2人はさらに、「経済状況が厳しい中、保有している株の公開買付けを頼りにしていたウィーワークの従業員たちが、売却益を得る機会を失った」と指摘している。
ソフトバンクは今後、ウィーカンパニーのその他の関係者からも提訴される可能性があるとみられる。ウィーワークの共同創業者で元最高経営責任者(CEO)のアダム・ニューマンや、同社の従業員(退職者を含む)などだ。
ニューマンは公開買付けで、ソフトバンクに約10億ドル相当のウィーワーク株を売却するとみられていた。ニューマンは今のところ、この件に関するコメントを避けている。
「存続の脅威」に直面
ウィーワークの最大の支援者と株主らの争いは、同社の存続を脅かす問題のひとつだ。新型コロナウイルスの感染拡大で世界中の労働者が自宅待機を命じられるなか、ウィーワークのコワーキングスペースはどこも無人になっている。
同社の損失は今後もかさんでいくだろう。2019年1~9月に22億ドルの損失を計上した同社は、各国でレンタルしているスペースの家賃について、所有者との再交渉を進めている。ウィーワークはまた、ソフトバンクが同社株の公開買付け終了後に行うとしていた11億ドルの支援も受けられなくなる可能性もあるとされる。
取締役からの提訴を受け、ソフトバンクの広報担当者はマスコミに宛てメールで声明を発表。「ソフトバンクの決定への反証として、まったく信頼できるものではない」「提訴は双方が合意した内容と、過去6カ月の取り組みを書き直そうとする捨て身の、そして見当違いの試みだ」との見解を示している。