木村氏「製造工程を通して、関与してくれた人みんながハッピーになる構造じゃないといけないと思っていて。社員もそうだし、協力会社や取引先のパートナーもそうです。たとえば、うちは協力会社から相見積もりを基本的に取らないし、取るとしても見積もりしていただくお金をきちんと払います。
自分たちだけ儲かることを考えるのではなく、すべての人がちゃんと幸せになっていくものかどうか。これが、本当の意味で『良い製品』を届けるのに必要な考え方だと思うんです」
数字よりも、「関係性の深さ」を大事にしたい
顧客から社員、協力会社、取引先まで、あらゆるステークホルダーにとっての「良い製品」を追い求める木村石鹸。その姿勢は「関わる人すべてが顧客にもなり得る」点でも、実は大切だと木村氏は話す。
木村氏「取引先の会社の方も、一人の個人。生活のなかで、うちの製品を使ってくれる顧客になるかもしれません。最初は仕事で関与してくれた人が、木村石鹸を好きになってくれて、使おうかなとちょっとでも思ってくれたらたら嬉しいですよね」
ブランドとファンのあり方として、そうした今ある小さなつながりを、より深く、そして長い関係性に結びつけていく。「正直さ」を貫いてきたモノづくりの先に、木村石鹸が今もっとも大事にしたいと考える部分だ。
“この商品は、1000人のコアな顧客(ファン)がいます。その1000人の顔もほとんど知っています。長い人はもう10年ぐらいお付き合いしてます。”
木村氏は、クラウドファンディング中に書いたnoteでも、企業と顧客の理想の関係を上のように表現している。この言葉にこそ、木村石鹸が目指したい姿が詰まっているのだろう。
だからこそ、クラウドファンディングの過程に大きな手応えを感じ、新しい工場でもあえて数や生産性を追い求めず、ファンとの「顔の見える」関係づくりに力を注ぐのだ。
木村氏「メーカーにいると、どうしても『出荷数』が興味の軸になっちゃうんです。でも、『最終的に何万個売れた』という数字からは、実際にそれを使ってくれてる人の姿が見えにくい。その方々がどのくらいの回数や期間使ってくれているのかもわからない。
僕は、本当に重要なのってそこだと思うんですよ。個々のお客さまとどれだけ深く関係を持って、どれだけ長く信頼が築けているか。そこを誇れるような会社に、木村石鹸がなれたらいいなと思っています」