経済・社会

2020.04.09 06:00

「医療費が払えず」新型コロナ流行で深まる、経済格差と貧困の現状




現時点ですでに貧困状態にある人たちや、所得の不平等に直面している人たちにとって、医療を利用できるかどうかや、医療制度のキャパシティは、大きな懸念材料となるでしょう。特に、低所得あるいは不安定な仕事に就く労働者は、パンデミックによってさらなる経済的リスクに見舞われることになります。

接客業や配達サービスの労働者はいま


ツイッター、フェイスブック、グーグルなど、企業は多くのスタッフにテレワークや自宅勤務を指示していますが、このような選択肢がない労働者は世界中に何百万人もいます。

「仕事をしないとお金を稼げない」とタイム紙に語るのは、サンフランシスコのドーナッツショップで働くフィナ・カオ氏。カオ氏のような客と接する仕事、世界の就業人口の49%にあたるサービス業で働く人たちにとって、ウイルスに晒されるのも怖いですが、就業時間を失ったり本当に必要な賃金を得られなくなったりするのも怖いのです。

「このように米国経済では、コロナウイルスの感染拡大によって、大学教育を受けていてパソコンさえあればどこでも仕事をできる労働者と、教育水準がそれほど高くなく、接客以外の仕事を見つけるのがますます難しくなっている労働者との隔たりがどんどん広がっている」と、アラナ・セミュエルス氏は書いています。

デリバルーのライダーやウーバーのドライバーのようにギグ・エコノミーで働く労働者、また自営業の人は、法律で定められた疾病手当を受け取る資格がありません。しかし、低い報酬と引き換えに自分たちの健康を危険に晒しながら、自己隔離を始めた人々に生活必需品を届けているのはこのような人たちなのです。

「何かうつされたらもう最後だ」とガーディアン紙に話したのは23歳のデリバルー配達員のシェーン・スティーブン氏。「ギグ・エコノミーの労働者は、病気になっている余裕はない。今の銀行残高は4ポンドちょっとぐらいなんだ」。

米国では、配車サービスを展開するリフトが、「新型コロナウイルスに感染していると診断されたドライバー、または隔離状態に置かれたドライバーに資金を提供する」と発表したことがロサンゼルス・タイムス紙で報道されました。一方、英国では、15000人の配達員を抱える宅配大手ヘルメス が、自営業の配達員が、コロナウイルスのため自己隔離を命じられた場合には給料を支払うと発表。それでも英政府は、法律で定められた疾病手当を拡大して自営業者を含めるという決定は今のところしていません。

米国では、人と接触する低賃金の仕事に従事している人の数は急増。飲食業や小売、食品調理など、これらは人々が外に出てお金を使うことで成り立っている仕事でもあります。新型コロナウイルスのパンデミックはこうした業種に大きな打撃を与えると考えられ、低所得労働者の現実はさらに厳しくなるかもしれません。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Laura Oliver, Editor and writer

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