「医療費が払えず」新型コロナ流行で深まる、経済格差と貧困の現状

健康保険の未加入者の健康が懸念されるアメリカ。ロサンゼルスでホームレスのためにマスクを配る団体も。 (GettyImages)

新型コロナウイルスの大流行の影響で、世界では経済格差について懸念されています。世界経済フォーラムのアジェンダから、その現状をご紹介します。


米国で8.5%が健康保険に未加入。かさむ医療負担


最近、中国から帰国しフロリダの家に戻ったオスメル・マルティネス・アズキュー氏は、体調が悪く、風邪のような症状が出ていたため、地元の病院でコロナウイルスの検査を受けました。検査は陰性でしたが、彼が請求された金額はなんと3000ドル。保険会社によると自己負担分は1400ドルとのこと。

米国では、疾病対策センター(CDC)主導のもと公の衛生研究所で行われるコロナウイルス検査は無料ですが、アズキュー氏の場合のように、ほかの病気の検査費用や交通費などの追加・関連費用は自分で支払う必要があります。彼への請求で分かるように、保険に入っていても費用は高額。その上、米国では2018年時点で人口の8.5%にあたる約2750万人が健康保険に未加入とされており、このパンデミックによって個人が支払う金額は膨大になる可能性があります。

国民皆保険がない米国のような国に横たわる、医療費を払える人たちと、医療費が払えず、ひいてはそのために極貧に追いやられる人たちとの間の格差を、新型コロナウイルスの大流行はまざまざと思い知らせました。

米国では、将来コロナウイルスのワクチンが開発されたとしても、すべての国民が利用できる金額になるかどうかは保証できないとアレックス・アザー厚生長官が述べたこともあり、ワクチンの利用について懸念の声が上がっています。

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(米国の医療危機で一番影響を受けるのは誰か)

3月からアフリカでも感染拡大。貧困地区での懸念


3月12日には、アフリカで初めてコロナウイルスによる死者が発生。BBCはアフリカ大陸の感染者数が「先週急速に拡大した」と報道しており、アフリカ、そして医療制度が脆弱な最貧国に住む人たちへの懸念が増しています。

WHOのアフリカ地域における緊急プログラム責任者ミシェル・ヤオ氏は、ザ・アフリカ・レポートのインタビューに、「最も懸念される事態のひとつは、人口が密集した貧困地区での感染者発生だ」と話しています。

「このような状況下で、医療施設が患者を治療する十分なキャパシティを持っていないと、多くの死者が発生しかねない。もっと深刻なのは、マラリアなどほかの病気の治療や、妊婦や子供に対する医療のリソースが、コロナウイルスによって減ってしまう可能性があるということだ」とヤオ氏は言います。
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文=Laura Oliver, Editor and writer

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