分断を乗り越える「自分ごと化」|逆境を生き抜く組織カルチャー Vol.2

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──海外で日本人が外国人のメンバーを率いる時に起きがちな問題はありますか?

どのような状況に関わらず、組織が抱える多くの問題は共通しています。まず、人の関係が悪くなるので、率直な意見が言えなくなる。意思疎通の質が下がり、組織としての行動の質が下がるので、当然結果の質も下がります。

関係が痛む背景には「こうあるべきだ」という強固な考え方があります。違いを認められない。国籍が異なると、それがより顕著になる、ということだと思います。前進のポイントは、その問題を生み出しているのが自分であることに気付けるかどうかです。

組織や集団を見ていく上で、私たちは個人の内省、リフレクションを重要視しています。他人の行動を見て、「こいつ許せないな、むかつく」という時は、リフレクションの機会です。なぜなら、そういう一面は自分の中にあることが多い。でも普段、悪いことだと思っているので、自分は自覚せずに、蓋をしている。

よく「多様性」と言われますが、まずは自分の中の「多様性」に気づくことが大事だと思います。自分の中にも様々な自分がいます。「評価されたい」「他者に勝ちたい」という自分もいれば、「自らの価値観に従った、新しい創造的なことをやりたい」という自分もいる。それは共存していてもいいのだと思います。自分に対してジャッジをせずに「器を広げる」ということだと思います。

特に部下を率いる上司の立場でそれができないと、自分以上の器の人材は育ちません。多様な自分を認められると、自分と違う他人も受け入れられる。そのつながりこそが組織を作り上げていると思います。

──ずばり、逆境に強い組織を作り上げるために、どのようなことが必要でしょうか。

2つのことが重要だと思っています。

まず1つは「問題は自分が作り出している」と気付くこと。個人が個人の在り方を見直していくことによって、周囲との関係を変容させていくことが可能です。最近はEI(心の知能指数)とも呼ばれていますが、それを高めていくことだと思います。

2つめは、正しい答えのない複雑なシステムの社会で、論理的に考えても、一人のリーダーが引っ張っていく、という形の限界を皆が感じています。「アダプティブ(適合的)・リーダーシップ」と言われますが、仲間と一緒に作り上げていくことが必要だと思います。ミネルバ大学でのクラスでも、「セルフコレクト」という要素が大事だと言っています。自分が、環境や周りの意見に柔軟になって、自分の行動指針を柔軟に変えていく力のことです。

──これからの日本社会にとって、理想的な個と組織の関係はどんなものだと思いますか?

個々人がより生き生きして働いていることです。それぞれ自分がどんな瞬間に生き生きしているのか、どんなことがやりたいのか、自分の軸が自覚できていて、その軸を追求することを組織が応援する。個人の成長をしっかりサポートする、という関係です。

その軸が組織の経営方針と違うと問題があるかもしれませんが、ここでいう軸というのは「自分はこんな仕事をやりたい」とか「こんな製品を開発したい」という具体的なものではなく「人とのつながりを大事にしたい」とか「なんでもいいからクリエイションしたい」など、もっと根源的なものです。

それを本人が自覚することを手伝い、追及していくことも応援する。それが個人と組織の理想的な関係だと思います。

文=岩坪文子

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