緊急事態宣言でどう変わる? 海外のロックダウン生活からヒントを探る

安倍首相は4月7日、緊急事態を宣言した。 (GettyImages)


太田さんが不安な点として挙げたのは、治安の悪化、とりわけ警察に扮したグループによる「罰金詐欺」が増加しているという。現在フランスでは、外出時には「特例外出証明書」の所持が義務付けられており、これを持ち歩かないと罰金の対象になるのだが、警官を装いお金を徴収しようとする詐欺が起きているそうだ。

日本においても、感染拡大が続く新型コロナウイルスの混乱に乗じ、金品をだまし取ろうとしたり個人情報を聞き出そうとしたりする「新型コロナ詐欺」が後を絶たない。日本の場合は、緊急事態宣言後も警察が「罰金」を徴収することはないが、人々の不安につけこんだ巧妙な詐欺には細心の注意を払いたい。

ニューヨーク市から車で3時間ほどの場所に位置するビンガムトンに住む大学院生の久後香純さんは、車を所有していないことでの不便が増えたと述べる。

「私は車を持ってないので、車社会のアメリカではロックダウン以降さらに不便に感じることが増えました。銀行はドライブスルーしか空いていませんが、車がないので使えない。レストランもドライブスルーのみ空いていることが多い」

ニューヨーク市やパリなど、生活に必須のサービスが密集している都市に比べて、車での移動を前提とした地域ではロックダウンの影響も異なると考えて良いだろう。日本においても、対象区域7都府県のうち、特にスーパーマーケットや薬局などが少ない地域では、緊急事態宣言に伴う営業時間の短縮などで、不便が大きくなるかもしれない。生活物資が途切れぬよう、配達サービスの活用なども視野に入れておくべきだろう。

ロックダウンされるパリ
ロックダウンで閑散としているパリ・凱旋門付近 (GettyImages)

海外在住者に聞く、ストレス回避法は?


ドイツ・ベルリン在住のフリーライター冨手公嘉さんは「友達を家に招くのも、2名以上は罰金の対象になるため、家で過ごすか、外で散歩することしかできない。やはり物足りなく感じる」と述べる。一方、久後さんはロックダウン生活のなかで最も不便に感じることは「友人や先生との交流がなくなったこと」だという。いつ平常時に戻れるかわからない状況で、友人との交流が減り1人の時間が増えることはストレスの要因となるだろう。

外出が制限されるなかで、イライラしたり落ち込んでしまわないにために、皆どのような工夫をしているのだろうか。

久後さんが指摘したのは、家にいてもスケジュールをきちんと立て、いつも以上に「規則正しく生活する」ことの重要さであった。加えて、日用品以外に本、映画、アロマや入浴剤など、家にいる時間が充実するためのアイテムを揃えることがストレス軽減に繋がるという。

ロックダウン時の暮らしは必要以上に働く必要がなくなり「仕事以外の人生に目を向けるいい機会になるのかもしれない」と述べるのは、ドイツ在住の冨手さん。日本で暮らす私たちに向けて次のようなメッセージを発信する。

「本や映画、音楽を楽しむ時間こそ、ささくれだった気持ちを癒してくれると思います。何もしなければ衰退しかねない文化にぜひお金を使ってほしいですね」

緊急事態宣言と聞いて少なからぬ人々が不安を感じるからこそ、各々が積極的に外出自粛に協力し、前向きに、自分自身を大切にして生活することが大切だ。政府には国民の不安を少しでも払拭できるよう、可能な限り、丁寧な説明を今後も求めたい。

文=渡邊雄介

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