宗教団体設立計画など、音楽・ファッション界における活躍に勝るとも劣らない予測不可な言動でも世間にインパクトを与え、話題をさらい続けている。カニエの音楽・ファッション界における躍進の軌跡、そして信仰の行方とは。
カニエ・ウエストのアーティスト、プロデューサーとしての成功
カニエは、2000年代初頭からラッパーとしての活動にとどまらず、楽曲のプロデュース、フィーチャリング、コラボレーションなど、様々なスタイルで数多くの楽曲を世に送り出し、今なお音楽界を牽引するひとりだ。
05年にリリースされた2ndアルバム『Late Registration』は、初週にアメリカ国内で86万枚を売り上げた。また、第48回グラミー賞では8部門にノミネートされ、「最優秀ラップアルバム賞」を含む3部門を受賞。以降、リリースした6枚のソロアルバムすべてが全米1位を獲得しているほか、度々グラミー賞にノミネートされ、19年までに合計69回のノミネート、21回の受賞を果たしている。
スニーカービジネスで「最も稼ぐヒップホップアーティスト」に
ファッションアイコンとしてもカリスマ的な影響力を持ち、ファッションデザイナーとしても、その地位を確立しているカニエ。アパレルブランド『イージー(YEEZY)』を手掛け、2015年からアディダスオリジナルズとコラボレート展開しているスニーカーシリーズ『YEEZY BOOST(イージーブースト)』は、新作が発表される度に購入希望者が殺到し、抽選必須のスニーカーブランドの一つだ。
アディダス公式サイトでもVIP会員しか購入が許されないなど、限られた店舗で限られたモデルだけ、それもわずかな数しか手に入らないというレアなスニーカーだ。
特に人気の高い『YEEZY BOOST 350』の発売後には、必ず争奪戦が起こると言っても過言ではなく、初代モデルにはプレミア価格がつくほどだ。カニエは19年9月にフォーブスが発表した「最も稼ぐヒップホップアーティスト」ランキングで、1億5000万ドルを稼いだとして首位を獲得。そこにはイージーの売り上げが大きく貢献したと推測されている。
カニエ・ウエストがクリスチャンになった理由と信仰の行方
19年、カニエは自身が毎週日曜日に開催しているコンサート「サンデー・サービス」をベースにした宗教団体を設立する意向を示した。
02年に起こした交通事故で顎が粉々になるほどの重傷を負ったカニエ。そこから生還できたことを「神の啓示」だと受け止め、それをきっかけにクリスチャンになったとコメントしている。
しかしながら、13年にリリースした『I Am A God』では「レストランよ、さっさとクロワッサンを持ってこい、俺は神」という歌詞が物議を醸したほか、ローリング・ストーンの表紙にイエス・キリストの姿で登場して世間を騒がせるなど、カニエの信仰が誠実なものであるかどうかは絶えず議論の的となってきた。
19年秋には、宗教色の濃い本格的なゴスペル・アルバム『JESUS IS KING』をリリース。R&B/ヒップホップアルバム、ラップアルバム、クリスチャンアルバム、ゴスペルアルバムのチャートで首位にランクインし、「今後はゴスペルしか作らない」と宣言している。
19年11月、ヒューストンのレイクウッド教会の礼拝に姿を現したカニエは、牧師との対談で、「俺は神にずっと呼ばれていた。でもそれを悪魔がずっと邪魔していた」「俺がどん底にいた時、神がそこにいてビジョンやインスピレーションを与えてくれた」などと語っている。