『孤独のグルメ』が教えてくれた、つまらない人生から抜け出すたった1つのコツ

ハ・ワン著、岡崎暢子訳『あやうく一生懸命生きるところだった』から

40歳を目前にして会社を辞め、「一生懸命生きることをあきらめた」著者のエッセイが、韓国で売れに売れている。現地で25万部を突破し、「2019年上期ベスト10」(韓国大手書店KYOBO文庫)、「2018年最高の本」(ネット書店YES24)に選ばれるなど注目を集め続けているのだ。

その本のタイトルは、『あやうく一生懸命生きるところだった』。日本でも東方神起のメンバーの愛読書として話題になったし、現地では、「心が軽くなった」「共感だらけの内容」「つらさから逃れたいときにいつも読みたい」と共感・絶賛の声が相次いでいる。

そんなベストセラーエッセイの邦訳には、シンガーソングライターで写真家の有安杏果さんが「人生に悩み、疲れたときに立ち止まる勇気と自分らしく生きるための後押しをもらえた」と推薦コメントを寄せているが、ここではその日本版から抜粋するかたちで、仕事へのモチベーションについて書かれた項目の一部を紹介する(第2回)。

第1回 「韓国で25万部のヒット本『あやうく一生懸命生きるところだった』の中身とは?」


人生をつまらなくする「とりあえず検索」の習慣


「まずは当たって砕けろだ。失敗したときは後悔すればよし」──ドラマ『孤独のグルメ』より

食事する店を選ぶのにここまで思い詰めるなんて、思わずクスリとしてしまう。食べることを至上の喜びとする『孤独のグルメ』の主人公・井之頭五郎は、仕事柄、さまざまな土地におもむいては自分を満足させてくれる食堂を感覚だけで探し出す。とりあえずスマートフォンで検索する僕らとは、まったく違うアプローチだ。

だからこそ五郎の食堂探訪にひかれる。評価が高く、失敗の少なそうな店を選ぶのではなく、個人の好みや瞬間のときめきに従うのがこのドラマ(漫画)の魅力だ。失敗してもかまわないと腹をくくり、自身の感覚と眼識、嗜好を信じる──。たかが食堂一つを選ぶのにだって、とてつもない勇気が必要なのだ。

「今日は隣町に行くから、うまい店を検索しておかなくちゃ」

「この映画、面白いのかなあ。映画評はどんな感じかな?」

「このレストラン、いい感じだけどネットにレビューがないな。だったら評価の高いこっちにしよう」

検索すればたくさんのレビューに触れられる世の中だ。確かに便利だし、失敗もうんと少なくなった。しかし、失敗が減った分だけ、楽しみも減ったような気がする。自分が選ぶ楽しさ、未知のことが教えてくれる楽しさのことだ。

タイトルとポスターに一目惚れして、勢いだけで映画館で鑑賞した映画の数々。初めての町をぶらぶら歩き、地味ながらも端正な看板にひかれて入った立ち飲み屋。内容もわからないまま、装丁が気に入って手にした見知らぬ作家の本。

結果的に最高の選択ではなかったとしても、そうやって選んだものはひときわ記憶に残り、ほっこりさせてくれる。そこには無謀かつ危険なものへの憧れと、自分の選択を信じて失敗もいとわない勇気があった。失敗する確率も高いが、成功したときの達成感は大きい。誰に頼ったものでもない、完全に自分の感覚で選んだものだからだ。
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ハ・ワン著、岡崎暢子訳『あやうく一生懸命生きるところだった』からの抜粋

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