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2020.04.18 14:30

半世紀たっても変わらない 抗争を続けるアメリカの老年暴走族

Getty Images


しかも、強烈な縄張り意識と、アメリカにしては異常とも言えるチーム団結意識があり、他の軍旗(モーターサイクルクラブ)と遭遇したときには、突然、その攻撃性が表に出る。発砲や集団闘争などの刑事事件を数年ごとに繰り返し、死者も出ているので、米国司法省も、これらの暴走クラブを、組織暴力シンジケートと位置付けている。
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50年たっても終わらない仁義なき戦い


近年もっとも有名な事件は、2002年に、ネバダ州の南端、コロラド川に面したラフリン地区でバイカー愛好者の全国集会があったときに、60年代から抗争しているこの暴走クラブ同士がホテルで鉢合わせになり、罵り合いから殴打が始まり、ナイフの殺傷、そして発砲に至ったものがある。3人が死亡したこの「コロラド川の陣」の修羅場を映したセキュリティカメラの画像は、いまでもユーチューブなどで見られる。

今回、裁判を争った事件は、2011年の発砲による殺人事件だが、検察は「偶然の小競り合いを装った計画殺人だった」という内部証言を得て、第一級殺人罪でクラブの幹部を起訴した。

被告人たちは、あくまで偶発だと主張し、検察と真っ向から対立して9年かかった。ヴァーゴースのメンバーの1人が検察と司法取引に応じ、自分の罪を免れる代わりに、これが計画殺人だったということを証言したので、最後まで審理がもつれた。
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実は今回、この裁判が全米の注目を浴びた理由は別にある。裁判長が、この司法取引に応じた目撃者の証言が偽証であると承知しながら証言台に立たせたと、検察を厳しく注意したからだ。

「司法取引を餌に嘘を言わせて、暴走クラブの幹部の首を取ろうとした検察こそが暴走した」とメディアは見ている。なかでもニューヨーク・タイムズは、「州の裁判で証人が一度は引っ込めた証言を、連邦裁判で無理に使ったことからも、司法省の不法行為は意図的だ」と手厳しい。

真面目なバイクファンの肩身を狭くさせ、50年たっても終わらない仁義なき戦いを継続している彼らを、米国司法省は(マフィアと違ってクラブが非合法な収益事業をしているわけでないので)根絶する実効策が打てない。今回の裁判は、こうした司法省の苛立ちを浮き彫りにしたともいえる。

2002年の「コロラド川の陣」でも、警察は49人を逮捕したものの、セキュリティカメラの映像だけでは誰が具体的にどんな暴力行為をしたのか特定が難しく、36人が無罪になっている。

アメリカを車で旅すると多くのモーターサイクルクラブの人間に出会うが、髪の毛が白いと思って、彼らを舐めてはいけない。「兄弟仁義」をおおっぴらに掲げる彼らは、仲間のためには身を捨ててかかる。しかも、それぞれ社会人なので資力もあり、メンバーには弁護士もいて、訴訟合戦も辞さない。闘いを挑んでくるものは、相手がどんな巨人でもひるまない。

自分たちの骸骨のロゴの一部を似せて使ったとして、高級百貨店「サックス・フィフス・アベニュー」や、シューズ専門オンラインショップ「ザッポス・ドットコム」を訴えて和解金を勝ち取ったほか、ただちに販売を差し止めさせ、在庫をすべて処分させている。彼らに会ったら、間違っても煽り運転などしてはいけない。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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