事務機器大手ゼロックスは3月31日、約半年に渡って進めてきたHPに対する350億ドル(約3.8兆円)の敵対的買収プランを撤回すると発表した。ゼロックスは、新型コロナウイルス対応を優先させることを理由としてあげている。
都市のロックダウンや屋内退避命令が広まり、グローバル経済が減速する中、企業のM&A活動も停滞している。デットファイナンスの滞りや株式市場の急落に加え、対面でのビジネス交渉が制限されていることにより、案件をクローズすることが困難になっている。
Dealogicの調査によると、今年第1四半期のM&A金額は2019年の第4四半期から大幅に減少し、グローバルでは35%減、米国では39%減だったという。同社のデータによると、今年クローズした案件の総額は6180億ドルと、前年同期の9560億ドルから大きく減少した。
Refinitivによると、2020年第1四半期の世界のM&A金額は前年比25%減の7305億ドルだったという。同データによると、米国では前年比50%減で、第1四半期の総額は2560億ドルと過去5年で最低だったという。
第1四半期に発表されたM&Aの金額上位10件のうち、米国で実施されたものは4件に過ぎなかった。M&A市場に占める米国のシェアは35%と前年から52%減少し、2012年以降で最低水準となった。
Refinitivのデータによると、第1四半期のM&A実績は2016年以降最低の水準となった。M&A件数は前年から13%減少し、過去6年で最も少なかった。
RefinitivでM&Aと資金調達の責任者を務めるCornelia Anderssonによると、年初にはM&A市場の活況が予測されていたが、状況は大きく変わりつつある。
「新型コロナウイルスのアウトブレイクがM&Aや資金調達に及ぼす影響が時間差で現れ、M&A活動の活性化が今年後半にずれ込むことが考えられる。しかし、感染拡大が収束しなければ、M&A活動が全体的に停滞するだろう」とAnderssonは話した。