米疾病対策センター(CDC)は先ごろ、糖尿病や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心疾患などの基礎疾患がある国内のCOVID-19患者に関する報告書を発表した。
この報告書は、2月12日~3月28日に全米50州の公衆衛生当局が収集した患者12万2653人についてのデータのうち、基礎疾患・呼吸器疾患が重症化するリスク因子に関するデータを収集することができた7162人(約5.8%)について分析を行ったもの(クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客と中国・武漢に滞在していた患者は除く)。
7162人のうち、呼吸器感染症が重症化するリスク因子がなかったのは、62.4%に当たる4470人。一方、集中治療室(ICU)に入った患者は、78%に基礎疾患があった。入院したものの、ICUに入る必要はないとされた人のうち、基礎疾患があったのは71%。さらに、入院の必要がないと診断された人で基礎疾患があったのは、27%だった。
この調査で対象とした基礎疾患は、米国人には一般的な病気だ。国民のうち、それぞれの診断を受けている人は糖尿病が10%、心疾患が10.6%、喘息が7.9%、COPDが5.9%などとなっている。
報告書はまた、喫煙者と過去に喫煙していたことがある人についてのデータも収集・分析した。専門家らはすでに、非喫煙者より喫煙者の方が重症化するリスクが高いと警告している。
この分析結果では、基礎疾患・呼吸器感染症の重症化リスク因子を持つ患者のうち、喫煙者・過去に喫煙していた人の割合はわずか3.6%にとどまっていた。それでも、喫煙者96人と過去に喫煙していた165人のうち、入院した、またはICUに入った人は、それぞれ合わせて27人(28%)、半数に近い78人(47%)だった。
ただし、対象者の人数が少なく、年齢などの特に重要な情報が含まれていないデータのため、ここから最終的な結論を導き出すことは難しいと考えられる。
報告書はまた、基礎疾患や高齢であることだけが、感染のリスクを高める要因ではないことを示している。データを収集することができた19~64歳の患者のうち、約6.5%は基礎疾患やリスク要因がないにもかかわらず、入院が必要な状態になっていた。さらに、このうち2%の人はICUでの治療が必要だった。
なお、データは治療が必要な患者から収集したものであるため、重症化する可能性が高い人に偏ったものとなっている可能性が高い。また、データにはほかにもいくつか注意すべき点がある。データが増えるに従って、数値や結果が変わる可能性があるということだ。
今回の報告書に含まれている患者のうち、基礎疾患に関する完全な情報を得ることができた人はわずか5.8%。だが、医療従事者が直面している現状から考えれば、これは驚くべきことではないとされている。さらに報告書は、対象とする患者が同じ場合でも、長期的にみた場合の結果は異なったものになると考えられる点に言及している。
ただし、CDCは今回の分析結果について、中国でまとめられたCOVID-19患者に関する報告書で示された「基礎疾患のある人は、ない人よりも重症化しやすい」との見方を裏付けるものだと述べている。