自身の血肉になる「筋トレ」のような読書体験を #STAYHOME

「読む力」を鍛える4冊(サムネイルデザイン=高田尚弥)

新型コロナウイルス感染拡大で、外出自粛が続く。自宅でできることとして、読書や映画鑑賞が推奨され、オンライン読書会が注目されたり、社員の読書を支援したりする企業なども出てきた。

きっと今この状況下だからこそ、物語を読む力が必要とされている。読書でウイルス感染は防げないが、読む力を鍛えることで、乗り越えられるものもあるはずだ。

名作は時を超える


例えば最近、ノーベル文学賞作家のアルベール・カミュが1947年に執筆した小説『ペスト』がSNSなどで話題となっている。1940年代のアルジェリアを舞台に、伝染病ペストの脅威に翻弄される街の様子が描かれた本作は、まさに現在の状況とリンクする点が多い。

コロナ ペスト

すでに読んだことがある人も、この機会に再読してみるとまた違った印象を得られるはずだ。もしかしたら、怖いとすら思うかもしれない。状況描写のみならず、特異な環境下における人々の集団心理の機微は、時代──つまり「インターネットの有無」──に関係なく、普遍的であるとわかるだろう。

そして、作中の「誰でもめいめい自分のうちにペストをもっているんだ」という言葉をどう解釈するか。資本主義社会を生きる者として頭をひねらせて考えたい。

名作には時代を超えたさまざまな教訓やメッセージが詰まっている。『ペスト』のように直接的でなくとも、今まさに自分のアンテナにひっかかる物語には何かの意味があるはずで、その物語を「今読んで感じること」は、今後の学びにもつながる。

今こそ、世界の「つながり」を知る


『サピエンス全史』を執筆したユヴァル・ノア・ハラリ氏は、今回の新型コロナについて「今日、人類が深刻な危機に直面しているのは、新型コロナウイルスのせいばかりではなく、人間どうしの信頼の欠如のせいでもある(略)信頼とグローバルな団結抜きでは、新型コロナウイルスの大流行は止められないし、将来、この種の大流行に繰り返し見舞われる可能性が高い」と記す。(「Web河出」3月24日配信記事「『サピエンス全史』のユヴァル・ノア・ハラリ氏、 “新型コロナウィルス”についてTIME誌に緊急寄稿!」より)

コロナ サピエンス全史

ウイルスとの戦いにおいて、国家間での情報共有などの協力体制は必然として、国際協力とは、国や政府といった共同体だけでなく、個人レベルでも可能なことだ。世界は分断されているのではなく、共存と包摂で成立していると理解するだけでもいい。

すべてを自分に関係ない出来事とは思わず、死者を悼み、失業者の苦境や医療従事者らの戦いを知り、自分にもできることを考え始めれば、思考は自然と行動に繋がる。あるいはそれが「家にいること(StayHome)」なのかもしれない。

そうして世界のどこかで生まれた誰かの思いや行動が、巡り巡って誰かを助けるかもしれない。そんな「世界のつながり」の偶然性に思いを馳せるきっかけをくれた作品がある。
次ページ > 昨夏翻訳版が発売、長く話題になっている小説

文=川口あい、サムネイルデザイン=高田尚弥

ForbesBrandVoice

人気記事