ビジネス

2020.04.08

「スタートアップのハブ」ベルリン、知っておくべき10のポイント

スタートアップコミュニティスペースFactory Berlinの様子(Getty Images)


7. 立地の良さと交通の至便さ


地政学的に東西ヨーロッパの交差点にあり、世界の高度IT人材集積地であるキエフ(ウクライナの首都)、ミンスク(ベラルーシの首都)などのニューイーストや、パリ、ロンドン、モスクワまで1〜2時間でアクセスできる。今年10月に開港予定のベルリン・ブランデンブルク国際空港の近郊には、テスラが欧州圏初のギガ・ファクトリーも建設予定だ。

8. アクセラレーターのサポート


ベルリンには36社のアクセラレーターがある。ユニコーンのひとつ、N26も「Axel Springer Plug&Play Accelerator」の卒業生だ。

ベルリン在住でアクセラレーター「bistream」を運営する武田誠氏と山本知佳氏は日本とベルリンの橋渡しをしているが、現地での活動を次のように語った。

「私たちは、2018年にJETROのアクセラレーションハブパートナーになり、ベルリンから欧州展開を狙う日本のスタートアップ、ベルリンを中心とした日本企業のオープンイノベーション、ベルリンのスタートアップの日本進出を支援している。 例えば、日本からドイツに進出するスタートアップなら、ベルリンエコシステムのブリーフィング、現状把握から個別ニーズに沿ったメンタリング、状況によってはビジネスパートナー候補(ベルリンだけでなく、ドイツやヨーロッパに及ぶ)の洗い出しと紹介などを行っている」

9. 豊富なVCとエンジェル投資


矢野氏によれば、ベルリンにおけるスタートアップへの投資額は総額約39億ユーロ(約4650億円)に及び、スタートアップに巨額の資金が集まるエコシステムが形成されているという。また、ベルリン発のユニコーンは、シリコンバレーやアラブ諸国、中国から資金調達をしており、市場も国外を対象とした会社が成功する傾向がある。

前出のN26はアメリカの有名投資家ピーター・ティールや中国のテンセントから、モバイルバンクの「PaaS」を提供するSolarisBankは日本のSBI証券や米国のVISAから、研究者向けのSNSを提供するResearch Gateはビル・ゲイツの個人投資から、音楽ストリーミングのSound CloudはロンドンやNYのVCやハリウッド俳優からも投資を受けている。


Sound Cloudの共同創業者、CEOのAlex LjungとCTOのEric Wahlforss(Getty Images)

著名なエンジェル投資家で、Angel InvestのCEOを務めるJens Lapinski氏は、2014年頃からベルリンに移住。約50社に投資実績を持つ彼は、「ベルリンのエコシステムが成長し、よりグローバルなスタートアップを生み出せる環境が整ってきた。欧州内ではロンドンのほうがまだ大きく、パリと同じくらいのサイズ感がだが、ユニコーン輩出も年々伸びている」とベルリンの成長を語った。

10. オープンイノベーション


イノベーションの専門家Christian Schmitz氏によると、EUのデジタル化とITの動向は米国と中国に遅れをとっており、VCも保守的だ。そのため、ドイツの経済エネルギー省は、企業、スタートアップ、消費者、研究開発を巻き込もうとオープンイノベーションのワーキンググループを設置し、施設や企業間コラボレーションの促進を行っている。

Telekom、Siemens、SAP、Boschなどの大企業がオープンイノベーションをリードしており、「Bosch eBike」などの成功例も数多い。スタートアップと大企業の連携を活用して、イノベーションとデジタル化が促進されている。

文=森若 幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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