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「大学入学共通テスト」で新たに導入されるはずだった2つの目玉、「英語民間試験」と「国語・数学の記述式試験」が、相次いで中止となった。

2019年9月号の本コラム、「やめよう!大学入試制度の変更」で、中止を訴えていたので、萩生田光一文部科学相の決定は、大歓迎だ。私のコラムが微力ながら中止に貢献したのかもしれない。

19年11月に英語民間試験中止、同12月に国語・数学の記述式問題の中止が決まった。

英語の民間試験中止の、政治的に最大のポイントは、民間試験の試験会場までのアクセスが、東京のような都会と地方の市町村で大きく異なるという受験生の負担の「地域格差」だった。

民間の英語試験は、6実施団体、8種類の試験の選択肢があった。試験会場の多さや試験回数はさまざまで、どの試験を受けるのが便利なのか、特定の大学に有利なのかは手探りの状況だった。

6団体といっても、47都道府県で試験会場を提供しているのは、2団体しかない。TOEFLは、アメリカの大学や大学院への留学には必須の試験だが、これを日本国内の大学入試に転用することが適切か。試験会場、定員、試験日なども、日本の大学入試に利用されることは想定されていない設定になっていた。

一方、「英検」には等級がいくつもあり、小学生から社会人まで、難易度に合わせた等級を設けて合否判定を行う、ということで馴染みがあった。柔道や将棋と同じような、力試し、実力の証明のように使われてきたものだ。ここでも、大学受験生に公平な実力を測る共通の試験(ひとつの等級)を新たに立ち上げて採点するのも、これまでとは違う難しさがある。

そもそも、国立大学の多くは民間試験結果を採用しないと宣言していたところも多かった。理由はこの8種類の試験結果を公平に比較することが難しいからだ。とりわけ採点の公平性が求められる入学試験で、全く別の試験方法に基づく試験を受けた人たちの試験結果を「公平に」比較するのは不可能である。

結局各大学は、いわゆる二次試験で英語の能力を判定することがより公平であると、判断していたのだ。実力判定には、これまでも行われてきた二次試験で十分、わざわざ民間試験を導入する意義は少ない、と大学側が判断していたことになる。

受験生側からの「地域格差」による反対論と、大学側の公平性重視の観点(による無視)が、英語民間試験の廃止に結びついた。きわめてまっとうな結論である。

文=伊藤隆敏

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