うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった

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フェリチンとは、体の内部に鉄を蓄えるタンパク質で、幹細胞などを中心に分布している。血液中の鉄分が不足すると、フェリチンに蓄えていた鉄分が放出されて、血液中の鉄分量を調節する。ふだん使う財布のお金を「ヘモグロビン」、貯金分を「フェリチン」とお金にたとえて考えるとわかりやすいだろう。

「ヘモグロビン値が正常でも、このフェリチン値が低下していれば、鉄の貯金が減っていることになり、気分が落ち込む、イライラする、動機やめまいがする、目覚めが悪い、冷え性である、といった症状が出ます。ヘモグロビン値が低くなる貧血を『鉄分欠乏性貧血』というのに対して、フェリチン値が低くなることを『潜在性鉄欠乏症』といいます。健康診断の数値を見ただけでは鉄不足を見逃してしまうことも多く、この“貧血ではないのに鉄不足”の人がうつやパニック障害の人にとても多いのです」

2014年に来院した15〜50歳女性患者217人のデータによると、初診時でのフェリチン値は、10ng/ml以下が87人(40.1%)、11〜30ng/mlが79人(36.4%)、31ng/ml以上が51人(23.5%)という結果だった。フェリチン値が30ng/ml未満の患者は76.5%にのぼり、約8割の患者が鉄不足であることが判明したのである。

「赤ちゃんのフェリチン値は200〜300ng/mlあり、生まれたときから鉄分が不足しているわけではありません。その後、ゆるやかに減っていき、初潮を迎えた中学生以降は激減し、毎月の月経で血液が体内から失われていきます。そして、20代後半から30代で妊娠・出産を迎えると、妊娠中は鉄とタンパク質の多くを胎児に与えるので、さらに重度の鉄・タンパク質不足になってしまいます。フェリチン値が10ng/ml以下になると産後うつの発症率も高くなります」

40代以降になり、閉経が近づくとフェリチン値は戻るというが、婦人科系の疾患にかかり出血しやすい状態になると、またフェリチン値が下がるので注意が必要だ。日本での、フェリチン値の基準は女性で5〜157ng/mlとされているが、藤川先生のクリニックでは100ng/ml以上になることを目標にしている。

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