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2020.04.08

「巣ごもり仕事」6つの極意。テレワーク20年のプロ、人気翻訳家に聞く

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翻訳家、鹿田昌美。ベストセラー『フランスの子どもは夜泣きをしない ―パリ発「子育て」の秘密』(2014年、集英社刊)をはじめ、『朝時間が自分に革命をおこす 人生を変えるモーニングメソッド』(2017年、大和書房刊)などこれまでに訳した本は60冊以上。編集者との打ち合わせなどを除けば、仕事場はこの20年来つねに「自宅」という、まさに在宅ワークの達人である。

在宅でも効率が上がる、むしろ在宅の方が仕事の質が上がるという奥義を、こっそり教えてもらった。


出版翻訳の仕事を始めて、20年になる。1冊の本を訳すのにだいたい3カ月。それを年間3~4冊訳す、という作業を、ほぼ休まずに20年間続けてきた。仕事場は、自宅の一室またはキッチン横のリビングルーム。家から一歩も出ない日もあり、電車に一度も乗らなかった月もあった。そんな生活だが、おかげさまで大きな病気もせず、それなりに楽しく過ごしている。

今、不要不急の外出自粛によって、テレワークに切り替えて自宅で作業されている方が多いと思う。これまで私は、自宅でフルタイムで翻訳作業をしていることを話すたびに驚かれ、「家でどうやって仕事ができるのか」「集中できないのでは」「子育てとどう両立しているのか(小学生の息子がいる)」と質問を受けることが多かった。

なにせ、自分にとっての日常であるので、日々を淡々と過ごしているだけなのだが、この機会に、改めて『家でも仕事がはかどる方法』についてまとめてみた。在宅作業最適化の手法はそれぞれの仕事の性質、内容によって異なるとは思うが、少しでもお役に立てたら幸いだ。

1.音楽を活用する。 


「仕事モード」という頭のスイッチをオンにするために、音楽をかける。人間が最も集中できるのは「無音」だということだが、家族がそばにいるなど、雑然とした環境で仕事をするときは、音楽をかけることがお勧め。「音楽に自分が包まれる」ようなイメージをつくると、作業がはかどる。さまざま試した経験上、最も翻訳がはかどるのはモーツァルトの曲。「1/fゆらぎ」の音を含むなどとして、科学的にモーツァルトの曲が脳に効くことが証明されているので、一度試してみる価値はあると思う。また、何度も聞き古した曲のほうが、安心して作業に集中できる。


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2.時間で区切らず、1日のノルマを決める。


逆に思えるかもしれないが、「夕方5時まで」と作業時間を区切るよりも「今日は5ページ」とノルマを決めるほうが、いい成果が出せる。「時間」ではなく「内容」に意識が向くからだ。「その5ページを、いかに素晴らしく仕上げるか」という目標ができるので、休憩している間も脳が自動的にその答えを導き出そうとしてくれる。それに、いい翻訳ができたときの達成感ときたら! 生きててよかった、ぐらいに嬉しい(大げさかもしれないが、その小さな「心の報酬」の積み重ねが、20年の持続につながっているのです……)。
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文=鹿田昌美

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