英語圏の諜報ネットワーク「ファイブ・アイズ」が予言していた「日本」

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欧州の安全保障に詳しい日本の大学教授は「日本にとって米国は唯一の同盟国かもしれないが、米国には世界中に同盟国がいる。米国はどの国にも、君たちとの関係が一番重要だと言って回るが、それを鵜呑みにしてはいけない」と語る。実際、米国にはファイブ・アイズがあるし、イスラエルのような特別な関係を持つ国もある。

最近、一部のメディアで、ファイブ・アイズが日仏独などと、特定の分野で情報共有の仕組みを作ることになったと報じた。ギンジェル氏は「ファイブ・アイズは英語を話す点で、より共通点が多いし、セキュリティーでも信頼している。だが、米豪両国が、お互いに相手と全ての情報を共有するわけではない。いくつかの技術的な交流はあるが、異なる点も多い。私が政府にいたときも、米国の情報すべてにアクセスできたわけではない。逆に、我々オーストラリアは、北東アジアでの運用に必要なインテリジェンスを日本と共有する必要はないが、米国は日本と共有していると確信するよ」と述べた。

ただ、ファイブ・アイズの文書が教えてくれているように、同盟関係に絶対という文字はない。オーストラリアも抜け目もない。7回にわたるForbes JAPANでの連載で紹介してきたように、豪州は今、中国の脅威にさらされ、米国との同盟維持を懸念する声も出始めている。

そこで、豪州の専門家や研究者たちが注目しているのが、「プランB」、いわゆる米豪同盟以外の生き残り策の検討だ。もちろん、本当に米豪同盟を破壊して、中国と同盟関係を結ぼうと言うことではないだろう。必死になって米国をこの地域に関与させるためには、脅しも必要だ。常に冷静に冷酷に現実を直視し、あらゆるチャレンジを試みようとしている。

翻って、今の日本はどうだろうか。安倍政権はトランプ米大統領との仲の良さを強調する発言が目立つ。日本外務省で「日米同盟以外の道」に言及すれば、それが同盟を維持するための方途であっても、たちまち昇進コースから外されてしまうだろう。日本の研究機関でも現時点で「プランB」を研究しようという動きはない。

日米同盟は日本の安全保障のための手段であって目的ではない。中国の台頭という地政学的な変化に加え、最近では新型コロナウイルスという世界を席巻する大問題も浮上している。私の知人の大学教授は「コロナはゲームチェンジャーになりうる。コロナのせいで、どこかの国の独裁者が死亡すれば、それが安保の空白を生むことだってありうるからだ」と警告する。

最後に、私に様々な示唆を与えてくれたオーストラリアの人たちに感謝したい。彼らもForbes JAPANの記事を自動翻訳して読み、一層日本に関心を持ってくれたようだ。日本とオーストラリアがさらに良い関係に発展することを祈って、このシリーズを終えたい。

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文・写真=牧野愛博

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