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朝日新聞編集委員(朝鮮半島、米朝・日米関係担当)


日米両政府の関係者らによれば、ファイブ・アイズは主に通信傍受システム「エシュロン」を共同運用し、電波やメール、インターネットなどの「電子情報収集(signal intelligence=シギント)」を行っているとされる。5カ国は自国や在外公館などに通信傍受施設を設け、電波情報を収集・交換しているとされる。情報の95%は企業や金融機関などの経済情報といわれているが、もちろん、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発や中国海軍の動向など、軍事情報も含まれている。

私がキャンベラで取材した豪シンクタンク、オーストラリア国際問題研究所(AIIA)のアラン・ギンジェル所長は「ファイブ・アイズは第2次世界大戦の頃から続く非常に古い関係だ。第2次大戦当時、5カ国はシギントを共有していた。それは必然だった。世界中でシギント情報を収集し、共有する必要があったからだ」と語った。ギンジェル氏は豪情報評価機関ONAの長官を務めたことでも知られる安全保障やインテリジェンスの第1人者だ。

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アラン・ギンジェル氏 撮影=牧野愛博

そして、戦争記念館に所蔵されていたこの文書には、日本に関する記述があった。それは、1980年代にどのような国家が原子力潜水艦を保有するに至るのかという文脈での一節だった。そこには「JIO(合同情報組織)の分析によれば、日本がおそらく1980年までに少なくとも1隻の原子力潜水艦の運用を始めるだろう」と書かれていた。

海上自衛隊は現在に至るまで原潜を保有してはいない。すべて通常動力による潜水艦だ。過去、世間で「海自も原潜を持つべきだ」という声が一部に出たこともあったが、政治的なハードルに加えて「原潜の場合、原子炉の定期的な交換などで維持費用が莫大になる。バックアップする施設の建設も難しい」(海自関係者)などの声が出て、今まで本格的な検討には至っていない。

ただ、私が非常に興味をひかれたのは、冷戦時代の1970年代に、米国などが日本をこのように見ていたという現実だった。この時代、日本は1976年に初めての「防衛計画の大綱」(51大綱)を策定し、78年には「日米防衛協力の指針(ガイドライン)」も作り上げていた。いわば、ソ連の脅威に対して日米同盟の強化に突き進んでいた時代だった。

それにも関わらず、日本が唯一の同盟国と頼んでいた米国をはじめ、親しい関係にあった5カ国がこうした評価を下していた。文書にはこういう一節もあった。「日本は豪州の潜在的脅威になるはずで、その脅威の一部として潜水艦を使うことになるだろう」

文・写真=牧野愛博

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