ファッションとサステナブル。作り手も消費者も「意識」を問われる時代に

ロンドンにあるステラ マッカートニーの旗艦店。壁紙は再生紙、マネキンはサトウキビ製だ

毎シーズン、トレンドを消費してきたファッション界にいま「サステナブルであること」という新たな視点が生まれた。ファッション、そしてビジネスを見つめてきたWWD JAPAN.com編集長の村上要氏とForbes JAPANライフスタイル編集部執行役員の佐藤英樹、ふたりの専門家には、ファッション業界のサステナビリティは果たして持続可能に映るのか──。


先鞭をつけたステラ マッカートニー


佐藤英樹(以下、佐藤):ぼくは長年出版事業に携わっており、2000年代初頭には『MYLOHAS』というメディアに参画していました。当時、ロハスいう概念と、そこから派生するライフスタイルが流行していたんですね。

村上要(以下、村上): ロハス! Lifestyle of Health and Sustainabilityでしたね。現在はあまり耳にしませんが、代わりにサステナブル、サステナビリティという言葉がよく使われています。

佐藤:SDGs(2030年までに実現させる国際目標として設定された持続可能な開発目標)が国連サミットで採択されたのは15年でした。以来、製造業はもちろん、金融やITなど直接モノ造りに関わらない業種であっても、サステナブルであるか否かという視点は非常に重要視されています。ファッションの世界ではどうなんでしょう?

村上:実はアパレル産業は、世界で2番目に地球に負荷をかけている業界だといわれています。たとえば、一着の洋服が消費者の手元に届くまでには、原材料の生産、製造、物流、そして販売と多岐にわたるサプライチェーンが関与しています。その過程から発生する温室効果ガスや排水、そして有機化学物質は、看過できないダメージを地球に与えています。

佐藤:でも最近は人造ファーや再生繊維など、持続可能性の高い素材も数多く開発されてきましたね。

村上:昔から、そしていまなお先陣に立つのは、ステラ マッカートニーです。動物愛護家で菜食主義者のステラは、自身のブランドを設立した01年から、レザーやファーは一切使用せず、代わりに再生カシミヤやナイロンをもとにした再生繊維、人工スパイダーシルクなど、環境への負荷が少ない素材を探し続け、コレクションを発表しています。


オーガニックコットンやエコキャンバスに加え、認証された森林から調達されたサステナブル ビスコースなどが使用されたステラ マッカートニーの19年秋冬コレクション。

佐藤:15年に発表された「ファー フリー ファー」はそのタグがついていなければ本物のファーと見まごうような出来でしたね。

村上:人造ファーは動物愛護の視点に立つと価値ある素材ですが、生産までのCO2排出はアニマルスキンファーの2倍に上るというデータもあります。正直、人によって賛否は分かれるところです。

でも、それでいいんです。個性の表現でもあるファッションと皆が考えるべき地球環境、トレンドを生み出し追い続けるというモードの宿命と持続性・永続性に価値を置くサステナビリティなど、ファッション業界は相反しながらも共存させなければならない2軸を結ぶ必要があります。個々の消費者が、共感できるスタンスを選択していけばよい。そう考えるきっかけを作ってくれたのは、ステラであることは間違いありません。


左:ステラ マッカートニーのファー フリー ファー(人造ファー)。右:ステラ マッカートニーが英国ブランド「ハンター」とコラボレーションしたブーツには、サステナブルに管理され、認証を受けたグアテマラの森林から調達されることで熱帯雨林を不要に伐採することなく、また、そこで働く労働者や地元地域社会の健全な生活が保護されていることを保証するナチュラルラバーを使用。
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text & edit by Miyako Akiyama

この記事は 「Forbes JAPAN 「スポーツ × ビジネス」は、アイデアの宝庫だ!12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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