より輝き、大きな成果につなげる「正しく導くこと」の重要さが書かれた一冊 [CEO’s BOOKSHELF]




自由であり続けるために20代で捨てるべき50のこと

四角大輔 著
サンクチュアリ出版 1,200円+税/199ページ

◎四角大輔
Lake Edge Nomad Inc.代表。1970年生まれ。ソニー・ミュージックエンタテインメント、ワーナーミュージック・ジャパンに勤務。両社でのアーティストプロデューサー時代に、7度のミリオンセールス、CD売り上げ累計2,000万枚を記録。現在は、ニュージーランドの湖畔と東京を拠点とし、クリエイティブ、アウトドア、ニュージーランド関連企業のアドバイザーを務める。

酒井誠一 ティムコ代表取締役社長

 著者・四角大輔氏に出会ったのは、約5年前のことです。一流の音楽プロデューサーとして、数々のビッグアーティストを育てた彼は、その全盛期に勤めていた大手レコード会社をスッパリ辞めて、好きな場所で自由に生きることを選びました。幼い頃から夢見ていた、大好きな釣りを極める、ニュージーランドの湖のほとりでの生活です。 

 夢を叶えることは、簡単なことではありません。社会人となり、日常に流され始めたらなおさらです。私もかつてミュージシャンを志したことがありましたが、いつの間にか諦めていましたから。 

 この本には、四角氏が夢を叶えるために実践した50の事柄が、順序立てて紹介されています。ムダなものを捨て身軽になり自由を手に入れるという、彼の生き方そのものです。なかには、理解するのが難しい項目もあるでしょう。ただ、読み終えた後に、清々しく前向きな気持ちになれたのは、もしかしたら今からでも夢を叶える方法があるのではないかと思わせてくれたからなのです。 

 四角氏の人生も、すべてが順風満帆だったわけではありません。大手レコード会社に就職し、趣味の釣りを楽しみたいという理由で願い出た、北海道勤務が実現したところまではよかったのかもしれません。そこで彼が配属されたのは、営業部。人と話すことが得意でなかった彼は、過度なストレスによる蕁麻疹や顔面麻痺などに苦しみました。さらに、駆け出しだったシンガーソングライター平井堅の才能を見出し、プロデュースする立場に抜擢されたものの、正しく導くことができず、プロデューサー交代。平井を世に知らしめたのは、新しいプロデューサーでした。 

 アーティストがやりたいように自由にさせることをよしとした四角氏に対し、嫌われることも恐れず、アーティストと意見をぶつけ合った新プロデューサー。結果は明らか、前述の通りです。 その失敗から、彼は優れた才能や発想は正しく導くことによって、より輝き、大きな成果につながることを学んだといいます。そして、自分の夢実現に向けても、より厳しく正しく自らをプロデュースしていく必要があると感じたのです。 

 実は、私にも苦い経験があります。オリジナルのアウトドア衣料を取り扱う直営店のリニューアルを行った時、店舗の改築を、信頼するデザイナーに一任。その結果、期待した効果を得ることはできませんでした。正しく導くことができなかった私の責任です。ヒット商品は、10人中たったひとりでも本気で欲しいと思うものを、正しく導いてこそ生まれます。プロデュース力が成否を決めるのです。 

 本書は、20代に限らず、経験を積んだ方々にこそ、手にしてもらいたいビジネス書です。

酒井誠一

この記事は 「Forbes JAPAN No.9 2015年4月号(2015/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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