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オランダで芽吹く未来の種


山田がコーヒーに強い興味を抱くようになったのは、大学生の時にアルバイト先で経験したコーヒーとお菓子のペアリング研修だ。

「当時の私にとっては、コーヒーの味の違いを感じることすら難しい状態でした。でも、その時感じたスマトラのコーヒーとシナモンロールの組み合わせに、とても感動したのです。グアテマラでもコロンビアでもなく、シナモンロールにはスマトラが最も相性が良く、お互いに引き立てあっていました」



「同じコーヒー豆なのに、収穫された土地が違うだけで、こんなにも味が違うなんて面白い。いつか生産地に関わる仕事がしたい」その想いを胸に、バリスタ、店舗マネジメント、ロースターの立ち上げを経験後、2014年にコーヒーのスタートアップに参画。

そこでは「掛け合わせ」に焦点をおいてコーヒーの楽しみ方を模索した。コーヒーと仕事、コーヒーとファッション、コーヒーとスポーツなど、コーヒーは私たちの身近にあり、楽しみ方は無限だ。自分のためだけではなく、誰かのためにコーヒーを淹れることで日常が少しだけ豊かになるかもしれない。そんな想いを抱きながら働いていた。

一方で、海外にも頻繁に足を運びながら研究活動も怠らなかった。2015年にはカフェラテ発祥の地と言われるサンフランシスコ、ロースターカフェのメッカであるオーストラリア、2016年にはオスロ、コペンハーゲンのカフェを訪問。2017年4月にはコーヒー生産地であるキューバに滞在し、現地の生産者と交流した。



2017年6月には、日本初の「シェアロースター」を開始して話題に。シェアロースターはコーヒー焙煎機を時間貸しするサービスで、サンフランシスコやニューヨーク、オーストラリアや北欧諸国ではすでに文化として根付いている。山田はそれを日本にも輸入し、コーヒーを好きな人々をつなぐことで新たなカルチャーづくりを試みている。

「透明性」を確保するための仕組みづくり


山田がTYPICAを通じて実現したいのは「透明な世界」だ。

「私たちはコーヒーを通じて、これまで知ることのなかった国に触れ、出会うことのなかった人と出会えます。コーヒーを育んだ自然、生産者、流通に関わる人、焙煎士、淹れ手、飲み手。この川上と川下の繋がりを、関わる全員が感じられるような状況を作り出したいと思っています」



TYPICAでは、コーヒー豆の流通を最適化するとともに、生産者や物流事業者がいくらの収益を得ているかの情報を見える化、つまり「経済透明性」を確保することで、適正な価格でコーヒー豆を売買することを目指す。

アパレルやチョコレートなど、コーヒー豆以外の分野でも「透明性」の重要性は広く認知され、その課題を解決しようと働きかける企業は増えているが、山田もそのうちのひとり。一途なコーヒー愛を貫き通した結果、起業をし、移住を選択した。

「デジタルでコントロールされたコーヒーより、人の手でつくられたものが美味しい。ラップトップ相手に時間を過ごすより、隣にいる人と繋がることに喜びを感じる。どんなにテクノロジーが発達しても、人は人を求めますから」

その言葉をきくと、山田は単にコーヒー豆の価格是正を成し遂げたいわけではないように思えてくる。山田は、「透明なコーヒー」を通じて、遠い異国の生産者、流通者、ロースターまで、コーヒーに関わるすべての人々と消費者との「平等なつながり」をつくりたいのではないか。みなが等しくつながり、それぞれが物語を紡ぐ先に、山田の掲げる理想の世界が待っている。

連載:オランダで芽吹く未来の種
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文=佐藤まり子

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