ゲイツ財団が「コロナ治療薬」開発に前進、既存薬を検証

ビル・ゲイツ(Jack Taylor/Getty Images)

マイクロソフト創業者のビル・ゲイツが設立したビル&メリンダ・ゲイツ財団は、3月10日、新型コロナウイルスの治療薬開発を加速化するためのアクセラレーター「COVID-19 Therapeutics Accelerator」を設立した。設立にあたってはゲイツ財団と、ウェルカムトラスト、マスターカードらが合計1億2500万ドル(約136億円)の資金提供を行う。

4月3日、ゲイツ財団は新たに3つのパートナーが、ここに加わると宣言した。英国政府と、マーク・ザッカーバーグ夫妻のChan Zuckerberg Initiative、さらに、歌手のマドンナが資金提供に参加する。

ゲイツ財団は新規パートナーらの提供額を明らかにしていないが、英紙インディペンデントによるとマドンナは100万ドルを寄付するという。マドンナは自身のインスタグラムの投稿で、ゲイツ財団への支援を表明し、他の人々もこの動きを支援するよう呼びかけた。マドンナの長年の友人だった俳優のマーク・ブルームは先日、新型コロナウイルスの合併症で亡くなっていた。

ゲイツ財団のアクセラレーターは、既存の承認済み医薬品による新型コロナウイルス感染症の治療効果に着目し、2つのテストを進めている。テスト対象となるのは、抗マラリア剤として知られる「クロロキン(chloroquine)」と、「ヒドロキシクロロキン(hydroxychloroquine)」だ。研究者らはこの2つの薬剤が、感染症の発症を防ぐ効果を見極めようとしている。

このアプローチは、WHOとは異なるものとなっている。WHOのトライアルでは、クロロキンのみが評価対象とされている。

ゲイツ財団のアクセラレーターは、これまでのデータから、ヒドロキシクロロキンが有望な候補であるとの仮説を検証しようとしている。同財団のプレジデントのTrevor Mundelは、「この薬剤はウイルスの細胞セル内への侵入をブロックする」とQ&A欄で述べた。

「今回のトライアルでは、ヒドロキシクロロキンを摂取した場合、発症を抑えられることを実証しようとしている」と彼は述べている。

ゲイツ財団はその他の治療薬の検証も進めているというが、単一の薬品がただちに新型コロナウイルスの治療に役立つ可能性は低いと予測した。Mundelは、HIVや結核の治療薬を例としてあげ、複数の薬剤の組み合わせが効果を発揮する可能性を指摘した。

「今回のアクセラレーターはまず、50から100の承認済み薬品を候補として選定し、さらに候補の絞り込みを行っていく」とMundelは述べた。「最初はまず個別の薬剤の効果を評価し、その後は薬剤のコンビネーション効果を評価していく」

編集=上田裕資

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