脳をだまして味覚を操作 「食のトリックアート」の魅力

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『「おいしさ」の錯覚』の著者チャールズ・スペンスはビジネス・インサイダー誌に対し、「人間の嗅覚は味覚能力に強く結び付けられているため、ベーコンの香りを嗅ぐといった食品関連の刺激を経験することで、その食品を食べている行為を想像することができる。ベーコンをたくさん食べていることを想像すれば、満足できるかもしれない」と述べている。

脳がベーコンのことを考えるようになるのは、そこに実際に肉があることではなく、木のスモークの香りがきっかけになるという考え方もある。(ココナツやセイタンを使ったベジタリアン・ベーコンの仕掛け人はもちろん、食品メーカー一般にとって、これは良く知られたことだ)

人の脳は言語を使うとき、空白を文脈から補うことができる。それと同じように、脳は料理に関する謎に直面すると、同じような離れ業をやってのけるのだ。ジェフリー・スタインガーテンは著書の『すべてを食べつくした男』で、リンゴの代わりにリッツのクラッカーを使ったアップルパイが、本物とほぼ同じ味がすることについて触れている。それは、人の脳がパイの味をリンゴ自体ではなく、レモンやシナモン、砂糖と結びつけて考えているからだ。

アレルギーや宗教、あるいは味の好みなどによる食事上の制約によって食品業界が変化を遂げる中、料理の世界でのこうした変革がどのように食の未来を作っていくのかを見ていくのは面白いだろう。

編集=遠藤宗生

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