現地の様子について、コペンハーゲン在住のフォトグラファー・編集者の松浦摩耶さんはこう語る。
「外出が禁止されているわけではないため、散歩やサイクリングをする人はいますが、街に出る人はかなり少ない。仕事はみんなリモートに切り替えているし、電車を利用する人はほとんどおらず、自宅にこもっている人がほとんどです」
人との距離をあけるよう促す表示
松浦さんによれば、13日の政府発表を受けて16日には付近の飲食店が全て閉鎖したという。人々は買い出しのためにスーパーへ出かけることはあるが、レジには当然のようにソーシャル・ディスタンスを示すマークが貼られていて、現金支払いはNG。品ぞろえはいつもと変わらない。
使われなくなった厨房でホームレスのための炊き出し
そんな中、コペンハーゲンにある飲食店が小さいながらもさまざまな取り組みを始めている。
Forbesの「The 10 Coolest Places to Eat in 2020」にも選出された2015年開業のレストラン「アルケミスト(Alchemist)」では、共同創業者でシェフのラスムス・ムンク(Rasmus Munk)が「JunkFood」というプロジェクトを開始。使われなくなった厨房で炊き出しをし、行き場を失ったホームレスたちにご飯を毎日提供するというものだ。
このプロジェクト自体は2018年に彼が「ダイエットに成功しなければ寄付をする」と宣言したことがはじまりで、当時10キロの減量に成功したものの、彼はこの企画にかけた22万デンマーククローネ(約350万円)をホームレスをサポートする団体に寄付したのだった。
その後「アルケミスト」のオープンにより休止していた同プロジェクトをすぐさま再開。18日にSNSでボランティアを募り、19日には約550人分のチキンスープとタルトが用意された。その後20日間分のボランティア・スケジュールがすでに埋まっており、現在はさらに多くの食事を作ることができるよう、協力できるレストランを探している。
「このあたりには500人以上のホームレスがいるとされますが、彼らの多くは悲惨な栄養状態にあり、それが地元のソーシャルワーカーの労働条件の悪化や地元住民の不安、ビジネスコミュニティの混乱につながりかねない」とムンク。
この「アルケミスト」が位置するのはレシャレエン(Refshaleøen)というコペンハーゲン東部の元工業地帯。再始動した超有名店「ノーマ(Noma)」の近くにある再開発エリアで、注目店が軒を連ねるが、現在は当然全てのレストランが閉店している状況だ。