ジャクソン・ポロックの作品(GettyImages)
ジャクソン・ポロック、マーク・ロスコ、ウィレム・デ・クーニング、アーシル・ゴーキーなど、このプロジェクトに参加した数多くの芸術家たちが、その後の20世紀美術を代表するアーティストになっていくことを鑑みれば、この支援がアメリカ文化にどれほど寄与したかは計り知れない。モダニズム絵画の最高到達点とも評されるポロックやロスコの作品は、20世紀の輝かしいアメリカ文化の代表のひとつであるが、これらは大不況時のアーティスト支援策から産まれたといっても過言ではないだろう。
「アウトブレイクが収束した際には、この計画が英国の芸術的な創造力を再び活気づけるだろう」と、オブリストが信じるように、大不況時にこそ大規模な芸術支援が必要になるのではないだろうか。
日本の文化芸術支援策は...
日本に目を向けると、現在文化庁のホームページには、宮田亮平文化庁長官による「文化芸術に関わる全ての皆様へ」と題されたメッセージが掲載されている。宮田長官はそこで、支援への意欲を表明し、「明けない夜はありません!」と関係者に励ましの言葉を述べる一方、具体的な保証内容には一切踏み込まなかった。
美術館や博物館の休館、演劇や音楽イベントの中止により、困難を強いられている人々の生活の見通しは未だ暗いままだ。
また芸術・文化事業の経済的な重要性に関して一切の言及がなかった点も、疑問視されて然るべきかもしれない。今日、アメリカやフランス等の先進国においては、文化事業は経済的に無視しえないウエイトを占めており、文化GDPで換算すれば、それは約3%から4%程度を占めている。
日本における文化GDPは欧米水準には届かないものの、そうであるからこそ、東京オリンピック・パラリンピックに向け、文化芸術資源を活用した経済活性化への取り組みは喫緊の課題とされていたのではなかったか。SNSなどでは、「都合の良い時だけクールジャパンと持ち上げておいて、困ったときに補償がないのはおかしい」といった意見も散見される。宮田長官のメッセージが有言実行となるよう、今後、適切な支援策が打ち出されることを期待したい。