ビジネス

2020.04.06

小売業界の革命児、「b8ta」が日本に上陸する理由

b8ta Japanカントリーマネージャーの北川卓司


5秒間立ち止まると「興味がある」とカウント


──b8taはRaaS企業として注目を集め、5年で24店舗展開するなど店舗数を急拡大しています。なぜ、これほどの成長を遂げることができたのでしょうか?

端的に申し上げると、b8taが家電量販店や百貨店にはない立ち位置を築いているからです。従来、メーカーやブランドの売上比率は家電量販店や百貨店が大半を占めていますが、売り場や価格のコントロールが難しく、売上に対するマージンも高い。それに加えて、什器を持ち込まなければならず、従業員の採用・トレーニング費用もかかります。

ブランドのイメージをコントロールし、伝えたいメッセージを正確に伝える場所としては自社ECや直営店が好ましい。しかし、多くのスタートアップやD2C企業があまり売上が立っていない状態で直営店を展開するのは簡単ではありません。

アメリカのD2C企業は多額の資金調達を行い、早い段階で直営店を展開していますが、ああいったビジネスの手法はすべての企業が真似できない。そうした状況もあり、我々はリテールを通じて人々に“新たな発見“をもたらすべく、店舗そのものではなく、区画を月額のサブスクリプションで販売するビジネスを生み出しました。



最大の特徴は月額料金以外の費用がかからず、店舗内のデータもブランドに提供することです。店舗運営に必要な従業員の手配、トレーニングやシフト管理、在庫管理、物流サポート、POS(販売時点情報管理)はb8ta側が提供します。

販売数量に応じたマージンもかからないので、b8taは“売上”をKPIにしていません。そのため、ロングテールで稼いでいくサブスクリプションモデルの商品は通常の小売店ではなかなか扱ってもらいづらいのですが、b8taではそうしたブランドやサービスもサポートできる。

また、各区画にはタブレットを提供し、そのタブレットの中のコンテンツは出品者が自由に編集できるほか、価格も来店者の反応次第でリアルタイムに変更できるようにしています。

店舗内のデータに関しては、2種類のカメラを設置していて、ひとつのカメラで年齢と性別を判別し、もうひとつで店舗内の行動をトラッキングしています。

──トラッキングは具体的にどのような仕組みになっているのでしょうか?

区画の前を通り過ぎた人の数をインプレッションと読んでいて、まずは何人が区画を通り過ぎたか、を計測します。その中で5秒間立ち止まった人は「興味がある」とカウント。さらに従業員が商品のデモンストレーションを行えば、デモンストレーションの数をカウントします。そして、それらのデータは弊社が提供するプラットフォーム上で売上と連動し、Google Analyticsのような感覚ですべてチェックが可能です。



このデータ活用が非常に面白いと思っており、店舗でどういったデータを計測できるかどうか、がリテールが生き残る重要な鍵になると思っています。そういった点で、b8taはユニークな立ち位置でビジネスが展開できていると思います。
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文=新國翔大 人物写真=小田駿一

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