Close RECOMMEND

世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版


生活圏の豊かさを「日常に取り戻す」という発想


──人がともに生きている環境をまるごと見ようとする。そこに、実はその町を動かしていく原動力を見出すということなのですね。

過去10年以上に渡り、欧州の地方都市の「地方創生」や「都市更新」のプロセスを継続的に見てきました。この町の場合は、旧い工業都市からの脱却やアイデンティティの回復、次世代の町の担い手育成などが大きな課題でした。環境、産業、文化のバランスをどのように取り戻すのか。

null
オーストリア・リンツ市

そのプロセスを見ながら、僕が発見したのは、社会をより良くしたいという新しい創造性も、それを生かし合う社会の仕組みがあって初めて生かされるのだという現実でした。確かに新しい発想やアイデアは個人から生まれます。広告コミュニケーションの仕事ならそれでいいかもしれませんが、この新しいアイデアを、次の生活圏の成長の力に変えていくには、そしてそれを市民の生活空間として具現化させていくには、様々な立場の人たちが協働しあうことがやはり欠かせない。そのプロセスを直に体験してきたことはとても得難い経験でした。その後、日本でも、他の海外の都市でも、リサーチをする場合のひとつの「羅針盤」のようになっています。

──日本ではどうでしょう?

日本では、2000年代初頭に人口減少や少子高齢化がいよいよ明らかとなり、成長期から縮退期と言われるようになりました。それは「企業が成長すれば、社会も一緒に成長する」時代から、「社会の発展が、経済の新しい可能性を生む」時代への転換です。でも、もう既に20年ですね。

この『CITY BY ALL』レポートの国内事例では、こうした課題に挑んでいる人々の取り組みを主に取り上げました。人口減少が切実な課題として顕在化している町から、むしろ新しい取り組みは生まれています。しかし、日本全体としては、まだ包括的な都市政策が実行されているかどうか、多様なセクターの人たちの間での連携できているかといえば、まだその途上にあるように感じます。

聞き手=石井節子

PICK UP

あなたにおすすめ