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『CITY BY ALL』、東京のページから

プロジェクトリーダーは博報堂生活総合研究所の鷲尾和彦氏。写真家としても活躍する鷲尾氏は、オーストリア·リンツ市で毎年開かれるメディアアートの世界的なイベント「アルスエレクトロニカ·フェスティバル」を日本に紹介し、国際コンペティション部門である「プリ·アルスエレクトロニカ賞」では審査員も務めた経歴を持つ。また現在は世界の都市再生に関する研究や講演活動も行っている。鷲尾氏にオンラインインタビューを行なった。



「CITY BY ALL」レポートとは


──「CITY BY ALL」レポートの内容について教えてください。

この3年間で行なった、国内と世界各地の都市のリサーチをまとめたものです。人口減少や少子高齢化、気候変動、社会的格差の拡大、地方創生、知識創造型社会への転換など、今日的な社会課題に対して、それぞれの町がどのような新しい発想で、課題を乗り越えようとしているのか、危機や変化に対して、どのようにして復元力(レジリエンス)の高い社会の仕組みをつくろうとしているのか、またそれはなぜ可能となっているか等について、できる限り学際的な視点で捉えたいと思って、フィールドワークを続けてきました。

──『CITY BY ALL』では欧州3都市、国内5都市を取り上げていますね。リヴァプール、バルセロナ、ダブリン、浜松、遠野、神山、豊岡、そして東京です。このレポートを読んでいくと、それぞれの事例の中に、どこか共通な発想があるように感じられます。

世界中ひとつとして同じ「まち」が存在しないように、当然のことながら、自然や風土、歴史的文脈、制度や習慣、今直面している課題など、様々な諸要因によって、その取り組みや目的は同じではありません。しかし、それでも相通じ合う発想や「法則」は確かにあるように思います。特に、大きなパラダイムシフトや危機的な状況を乗り越えようとする時には。

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バルセロナ市の風景(『CITY BY ALL』より)

──それはどのようなことでしょうか。

人が生きている環境は、市場という経済圏だけで出来ているわけでなくて、自然環境や、人と人との繋がりという社会的環境、歴史や文化などの文化的環境、そうした様々な要素が合わさって作られています。それだけ書くと当たり前のことなのですが、ただ、そのことに「自覚的にある」かどうか、そしてそれを具体的な都市政策や都市経営に据えて落とし込んで実践しているかどうかは別だと思います。

多様な地域資源を生かそうとするストック発想で、ランドスケープやアーバンデザインが検討されているかどうか。経済、文化、環境、都市計画など、異なる専門領域の人々が協働しあうクロスセクター型(分野横断型)のガバナンスや仕組みに知恵を絞っているか。またその担い手を育てるための教育や社会政策を持続的に行っているかどうか。そうした活動に現れてきます。


聞き手=石井節子

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