今回のプロジェクトはPan-European Privacy Preserving Proximity Tracing(PEPP-PT)と呼ばれるもので、8カ国にまたがる約130人の研究者らが、EUの一般データ保護規則(GDPR)に準拠しつつ、感染者をトラッキングすることを目指している。
PEPP-PTのアプリは、早ければ4月5日からの週に公開される。
スマホを活用した感染者の追跡は中国やシンガポール、韓国などで既に成果をあげている。英国政府もオックスフォード大学の研究者らと共同で、独自のトラッキングアプリを開発中だ。
しかし、英国政府のアプリは市民らの自発的参加を促すもので、利用者らが自らの意思で情報入力を行うことを期待している。
一方で米国政府はフェイスブックやグーグルなどのテック企業らと協議を重ね、人々の匿名化されたビッグデータを収集しようとしている。このアプローチで米国政府は、感染拡大の動向を把握することになりそうだ。
イスラエルでは人口の17%に相当する約150万人が、自発的に同様なアプリをダウンロードし、感染者の位置データを把握する試みを行っている。ネタニヤフ首相はこのアプリの利用を全国民に義務づけることを提案したが、強い反発を浴びている。
ロシアの首都モスクワにおいても、間もなく同種のアプリが導入される。
ワシントン・ポストは3月18日の記事で、米国政府がテック企業らに対し、感染拡大の防止を目的とするプロジェクトに、協力を要請中であることを報じていた。
記事中で、グーグルの広報担当のJohnny Luuは「新型コロナウイルスとの戦いにむけ、匿名化された位置情報を集約する方法を探っている。グーグル・マップ上で、人気のレストランの滞在時間を表示するのと同じアプローチで、ソーシャルディスタンシングの効果を可視化できるかもしれない」と述べていた。
「ただし、当社のツールは、特定の個人の位置情報や連絡先を外部と共有するものにはならない」と彼は付け加えていた。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)の報道によると、米国のテック企業の多くは、エドワード・スノーデンが米国国家安全保障局(NSA)によるプライバシー収集を暴露して以来、ユーザーの個人情報を政府機関とシェアすることについて、否定的なスタンスをとるようになっているという。