テクノロジー

2020.04.06 07:30

5G時代に突入。「1試合=1億円」スポーツ放映権の歴史を振り返る

サムネイルデザイン=高田尚弥

選択肢が増え続ける映像視聴の歴史


映像視聴の歴史を古い順に大雑把に振り返ると、以下のように推移している。
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A. 1950年代〜:テレビカメラ映像→テレビ電波→テレビ受像

B. 2000年代〜:テレビカメラ映像→IP→パソコンで受像(初期ネット配信)

C. 2010年代~:テレビカメラ映像→IP→スマホで受像(DAZNなどのOTT)
 ※OTTとは、Over The Topの略。特に通信会社を介さず、動画・音声などのコンテンツ・サービスを提供する事業者の総称
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D. 2015年頃~:スマホカメラ映像→IP→スマホで受像(UGC)

E. 2020年~ :スマホカメラ多チャンネル映像→IP→スマホ(5G+UGC)

問題を複雑化させる点は、こうしたソリューションがその時代時代で単一であるのではなく、ソリューション数が増加し、様々な手法で視聴者にデリバリーされる選択肢が増幅することだ。

莫大な金額を要求されるオリンピック放映権はAに該当、BとCについては放映権を購入する概念があったが、スマホで撮影するようになったD以降、その意識が希薄に。Eは、試合会場にて観客がスマホで動画撮影もしくはストリーミングが可能。一方で億単位の放映権料が支払われ、他方では入場料程度で同時配信が可能になってしまう。

水はもちろん低い方向に流れる。これが「ダムの崩壊」を招くのだ。

「巨人戦」というドル箱コンテンツはいま


巨人戦観客
巨人戦1試合の放映権はかつて「1試合=1億円」という相場だった。(GettyImages)

実際に、ダム崩壊によりスポーツの放映権ビジネスが雲散してしまった事例が過去にある。

プロ野球だ。かつてテレビには「巨人戦」というドル箱コンテンツが存在した。昭和の少年であれば、夜になると自宅のテレビには巨人戦が映し出された……という記憶のある世代も多いはずだ。かつて巨人戦の地上波での放映権は「1試合=1億円」という相場があり、巨人戦だけで年間130億円以上の権利料が産み落とされていた。

しかし現在は、関連会社の日本テレビでさえ、地上波で巨人戦をオンエアするのは年に数試合だけ。

プロ野球が不人気となったからか……いや、そうではない。販売チケット数として実数が計上されるようになった2005年以降の観客動員数は、セリーグは2万6000人から2015年には3万1000人、パ・リーグが2万人から2万5000人へと、着実に伸ばしている。

巨人戦の視聴率で特筆すべきは、1994年10月8日の巨人・中日による優勝決定戦。フジテレビでオンエアされたこの試合は世帯平均視聴率48.8%と21世紀の現在からは、およそ信じられない数字を叩き出している。

1980年代の巨人戦は概ね25%で推移。しかし2000年に18.5%と20%を割り込むと、その後、イチローや松井秀喜らスーパースターが活躍する時代がやって来ても、その数字は回復せず、2006年以降、ひと桁台に落ち込み現在に至る。

これもひとつのダム崩壊。気付いた時にはすでに打つ手がなかった。
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文=松永裕司

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