「治す」がゴールじゃない医療もある。患者が幸せになるテクノロジーの使い方

アイリス株式会社代表取締役社長・医師の沖山翔氏


国が目指す医療の未来は、まるでSFの世界


医療 ABEJA

医療の世界のAIは、だいたい上記の3つのフェーズで価値をもたらしてくれます。まずは検出や診断で、人間が到達できないほどの効率化を進めることができます。その次が、高い精度や成功率の水準。その先に待っているのが、人間が想像もつかないようなアプローチによる診断方法の実現です。

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このような医療AIの開発は、民間企業が取り組んでいるだけでなく、国もバックアップしています。厚生労働省が6つの重点強化領域を指定し、それぞれ目標を明確に提示しています。

なかでも興味深いのが、手術支援の項目です=上図。麻酔科のAI支援実用化や自動手術支援ロボットの実用化などの技術は、まるでSFの世界です。

こうした夢の技術について、政府の役人や研究者たちがスーツにネクタイで大真面目に議論しているのです。私も「新しい時代になったな」と思いながら取り組んでいます。

テクノロジーの進歩に終わりは見えない


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今はテクノロジーが爆発的に進歩している時代です。上のグラフにあるINTEGRATED CIRCUIT(集積回路)は1.5年ごとにコンピューティングパワーが2倍になっている。これを「ムーアの法則」と呼びます。

毎年のように「ムーアの法則はそろそろ終わるんじゃないか」と言われていますが、最近グーグルが「量子コンピューターを使って量子超越性を達成した」と発表しました。

この量子コンピューターという新たなパラダイムが出現して、ムーアの法則は続いていくだろうという人もいます。

現代こそが革新の時代


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大正や昭和の10年間よりも、平成の10年間に起こった進歩のスピードの方が速いと感じていると思いますが、令和になるとそのスピードはもっと加速していくでしょう。テクノロジーの進歩にともない、農業や畜産などの生産力や上下水道などのインフラ整備も飛躍的にアップします。

その影響で世界人口も爆発的に増えます。今50歳くらいの人は小学生の頃に世界人口は40億人と教わったと思います。現在の人口は75億人で、毎年0.8億人ずつ増えているので、今年生まれた子どもが小学生になる頃には85億人だと教わるでしょう。
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取材・文=山下久猛 編集=川崎絵美

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