貿易戦争が邪魔をする、米国の新型コロナウイルスとの闘い

Photo by Win McNamee/Getty Images

国際状況が比較的安定していたころにドナルド・トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争は、米国の味方も敵も、一様に遠ざけた。そして今、その貿易戦争は、世界のリーダーや医療関係者による新型コロナウイルスのパンデミックとの切迫した闘いを困難なものにしている。

「トランプ大統領が見当違いに仕掛けた中国との貿易戦争の意図せぬ不穏な結果が、新型コロナウイルスのパンデミックと闘う米国の足を引っ張るおそれが突如として出てきている」。バラク・オバマ前大統領時代にホワイトハウス上級経済顧問として大統領経済諮問委員会に加わっていたチャド・バウン(Chad Bown)は、ブログにそう書いている。

「トランプ政権が中国の医療用品に課した関税は、米国全体が医療危機に陥ったときに、必要不可欠な装置の不足や価格高騰を招くかもしれない」

トランプの敵対的な貿易政策により、中国は、医師・看護師用の防護衣や先端技術のモニター機器の輸出先を米国以外に移していたが、それがきわめて危機的な時期に重なった。

「米国の医療機関はいま、必需品を別の国から輸入するという切迫した問題に直面しているが、別の国々も、自国の医療危機に備えて、そうした必需品を備蓄しようとする可能性がある」とバウンは書いている。バウンは現在、ピーターソン国際経済研究所の上級フェローを務め、ポッドキャスト「トレード・トークス(Trade Talks)」の司会者のひとりでもある。

バウンは、3月上旬に新たに発表された一時的な関税免除措置について、「貿易戦争が公衆衛生を危うくしていると事実上認めたものであり、喫緊に必要とされる品目のみを対象としている」と述べている。

影響はどれほどの大きさになるのだろうか? IHSマークイットによれば、2019年には、手術・医療用手袋、防護衣およびマスク、医療・手術用器具、人工呼吸器など、米国に輸入される重要な医療用品カテゴリーの製品の3分の1を中国が占めていた。

IHSマークイットの生命科学・産業サービス部門を率いるグスタヴォ・アンドー(Gustavo Ando)は、声明のなかで以下のように語っている。「米国と世界の医療システムが、ウイルスとの闘いに必要なキャパシティを確保しようと競い合うなかで、世界的な医療用品サプライチェーンに問題が起きた場合、新型コロナウイルスのパンデミックに効果的に対応する能力が損なわれる深刻なリスクがある」

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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