マレーシアの現状と対応に学ぶ「密」の脅威 モスクで新型コロナに集団感染

集団クラスターが発生したモスクでの礼拝参加者 新型コロナウィルスの検査を仮設テント内で受ける/礼拝参加者から提供


実は、マレーシアと日本の感染者数は、ここ数日で追いつき追い越せの似たような数字を辿っている。マレーシアの感染者数が現在2908人、死者45人であるのに対し、日本では感染者数2384人、死者57人(共に4月2日時点)。死者数はわずかに日本の方が多く、全人口比での差はあるものの、数で見ればほぼ同じようなレベルの段階にある。

しかし、既に、各家庭から1人の外出しか認めず(4月1日からは活動制限令が更に厳格化し、1台の車に原則1人の乗車のみ認められる)、病院や買い出し以外での外出は欧州などと同様に厳しく取り締まられるマレーシアと、日本政府の対策の現状には、大きな隔たりがある。

無論、未知のウィルスに対する国家の対策は、国により背景も異なり、正解は全く見えない。しかし、仮に無症状でも感染している可能性も存在するなかで、死をも招くウィルスの拡散に対して個々人それぞれに求められる“危機意識”の高さは世界共通であろう。


マレーシア国内では至るところに電光掲示板で「Covid-19に共に立ち向かおう」など、国民の団結を求める告知が見られる/筆者撮影

既に、3週間前から自宅でリモートワークを続けている、首都クアラルンプールの大手企業で金融アナリストを務める男性はこう語った。

「マレーシアでは、原則全ての企業がリモートワークを義務付けられています。まさかと思っていましたが、私の会社でも数人の感染者が出て、オフィス全体が急遽消毒され、パソコンを持ち帰ったその日から、もう一度も出勤は許されていません。この数週間で生活はまるで様変わりしました。また次なる集団感染が出たら、急速に事態は悪化するので、政府が指導力を今発揮していると感じています。今は、政府が要請する指示には最大限、国民が懸命に協力している状況です」

そして、大の日本贔屓でもある彼は、こう続けた。

「日本は大丈夫でしょうか。私は日本が大好きなので良く情報をチェックしているのですが、花見客で混雑する写真や朝の満員電車が依然として続いている写真をSNSで見て、非常に驚きました。日本でも一刻も早く、政府により厳格な措置が出ますように。未知のウィルスの感染、拡散力は我々の想像を超えているのですから」

連載:元テレビディレクターが行く、「世界の現場」
過去記事はこちら>>

文・写真=海野麻実

ForbesBrandVoice

人気記事