ビジネス

2020.04.12

「創造」は分野を超える 技術者がカリスマシェフから学べること

Michael H /Getty Images


未知の料理を創造するには、新しい「調理法」の開発も必要でしょう。このあたりは、われわれ技術者が、新しいデバイスを創造するときに、製造方法、特に量産方法から考え始めることと、とてもよく似ています。

料理も、時代を経て、人々の好みや調理器具の進化などの変化が起こっており、シェフも、その時々の「旬」を取り入れることで、時代性を維持する努力をしています。われわれ技術者も、進化が劇的に速いデジタル技術を活用して製品やサービスを構築するには、常に「最新のデジタル技術」を意識しておかなくてはなりません。

「創造」こそ人間に求められる仕事


料理のレシピを生成するAIが登場し、また調理の自動化もロボティックスによって加速的に導入されています。ソフトウェア産業においても、AIによるプログラミングの可能性が現実になってきているようです。世界で戦う前にAIと戦う時代がすぐそこに来ているのかもしれません。

AIはまず、定型業務を自動化して行きます。われわれ人間は非定型業務を担うことになりますが、それもそのうちAIに代わり、やがて意思決定業務や戦略立案さえも、AIができるようになるでしょう。

最終的には「創造的な仕事」が、人間が担うべき仕事なのだと思います。昨今は、ビジネススクールよりもデザインスクール、MBAよりもアート修士というトレンドも生まれ始めているようです。

このトレンドは「論理力」とか「分析力」といったアナリティカルな能力から、まさに「想像力」と「創造力」といったシンセティック(合成的)な能力が求められている証左であり、AIなどのデジタル技術が急速に発達していく流れのなかで、今後の人間の役割を暗示しているものとも言えます。

世界ではテクノロジーの進化が加速度的に進み、人間の役割が再定義されています。企業を取り巻く環境が劇的な変化を迎えるなか、私は日本企業の再興には、研ぎ澄まされた「想像力」や「創造力」が必要であろうと考えています。

われわれがカリスマシェフの創造力から学ぶということは、このトレンドの線上にあり、少なくない日本人の達人たちが「食」という普遍的な場において、卓越した創造力を発揮して海外で活躍していらっしゃるのも、世界に挑戦しようとしている企業人や技術者の皆さんの参考になることが少なくないと思います。

カリスマシェフは、創作の「正攻法」や「創造のための文法」を熟知しているだけでなく、「旬の取り入れ方」や「価値転換の方法」など創造のコアとなる要素の扱い方を体得しています。世界で戦いたいと思っていらっしゃる皆さんには、こういったカリスマシェフの創造力から多くを学び、「創造的な仕事」でトップランナーとなって、日本経済の再興に貢献してほしいと願っています。

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文=茶谷公之

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