コロナ対策で急浮上、「2兆円のビッグデータ企業」Palantirの正体

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米国の疾病予防管理センター(CDC)は先週から新たなウェブアプリを導入し、新型コロナウイルスの感染拡大状況や、医療機関の対処状況の把握を開始した。事情に詳しい関係者によると、このアプリの開発元は企業価値が200億ドル(約2兆1500億円)とされるビッグデータ解析企業の「パランティア(Palantir)」だという。

パランティアは以前から米国政府と提携しており、合衆国移民・関税執行局が同社のツールで人権侵害を行っているとして、市民団体が強く抗議していた。

しかし、CDCとのプロジェクトでは全データを匿名化することで、パランティアは非難を避けようとしているという。同社は米国の医療機関から収集した匿名データを「Palantir Foundry」と呼ばれるプラットフォームで分析し、使用可能な病床数や人工呼吸器の数を把握しているとされる。

パランティアは感染拡大の予測モデルも開発し、CDCの活動を支援している。同社の広報担当は「当社はCDCを含む合衆国保健福祉省(HHS)傘下の機関と緊密な連携をとり、感染拡大に立ち向かううえで必須となる、包括的で正確な情報の入手を手助けしている」とコメントした。

米国ではグーグルやオラクルなどの複数のテック企業が、感染拡大に対処するためのデータ収集や解析で政府を支援している。この試みで、企業らはモバイル端末の位置情報を活用している。パランティアのツールは、現状では個人を特定可能な情報を用いていないが、「将来的にその仕様が変更される可能性は否定できない」と関係者の一人は証言した。

CDCが数日前に導入したパランティアのアプリのデータは、アマゾンのクラウドサービスのAWSに貯蔵されているという。

複数の報道からイギリス政府もパランティアのプラットフォームを利用中であることが確認された。英国の国民保健サービス(NHS)は、AWSやマイクロソフトのクラウドとパランティアのプラットフォームを組み合わせ、新型コロナウイルスへの対処を進めている。

英国政府は先週、パランティアのFoundryを用いて、医療キャパシティや、患者の病院での滞在時間の把握を行っていると発表した。「パランティアの役割はデータの解析であり、管理権限は持たない。彼らがNHSの許可を得ずに外部にデータを渡すことはない」と政府は説明した。
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編集=上田裕資

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