──米国のコロナ危機が急速に悪化しています。
この感染拡大ペースは、まるでハイパーインフレさながらだ。1日で30%、40%、50%増などという状況は、通常の社会生活では考えられない。ハイパーインフレもそうだが、目まぐるしく数字が変わり、2週間前には予想もつかなかったような勢いで激変していく。人々の行動も様変わりした。これほど急激に事態が変わるようなことは歴史上、なかった。1918年のパンデミック(スペイン風邪の世界的大流行)でも、ニューヨーク市の封鎖には至らなかった。
──あなたは『Capitalism Alone』の中で、「『政治的資本主義』は自由主義の挑戦をかわし、自らの優位性を示すべく、絶えず高い経済成長率を示さなければならない」と書いています。コロナ危機により、感染症発生の地である中国は高成長を達成し続けることが難しくなったと思いますか。
このパンデミックが今年の秋までに収束すれば、つまり、比較的短期で終われば、中国や米国、他の国々に(経済システムなどの)主要な構造的変化が生じたり、グローバリゼーションに大きな影響が及んだりするとは思わない。
政治的資本主義においては、高成長を実現できなければ(システム自体が)危機に陥るため、高い経済成長率の維持が極めて大きな必要要件になる。とはいえ、この未曽有の事態がいつまで続くのか、どのくらい犠牲者が出るのか、先が読めない中、(中国などの)政治的影響力が今後、どうなるのかを見通すのは難しい。
パンデミックが長引けば、多くのことが起こりうる。例えば、すでに、いくつかの国で起こっているが、政府が危機を食い止められず、社会的秩序が崩れて刑務所から囚人が脱走するなど、最悪のシナリオも考えられる。何が起こるかなど、予測不可能だ。
──イタリアやスペイン、ドイツなどでも感染が拡大していますが、欧州経済への影響は?
収束時期にもよるが、欧州経済には非常に大きな影響が出るだろう。併せて、今回のパンデミックが政治的要素をはらんでいることも、欧州連合(EU)にとっては重要な点だ。例えば、イタリアに対し、EUが思い切った支援策を講じたようには見えない。つまり、大規模な危機が起こったら、EUは距離を置くという姿勢が見て取れる。各国政府が責任を持って危機に対処せよ、というわけだ。(全文は4月25日発売のForbes JAPAN 6月号に掲載)