「寝不足自慢」にピリオドを。働き方改革を後押しする睡眠の可能性

(左)ワーク・ライフバランスの小室淑恵 (右)ニューロスペースCEOの小林孝徳

私たちの生活には欠かせない「睡眠」。日頃、どれだけ意識して睡眠時間を確保できているだろうか? 仕事を言い訳にして、4時間睡眠の日々を送っている人も少なくないだろう。

そうした中、働き方改革を進めていくにあたって睡眠の重要性を語るのが、睡眠改善プログラムで企業の健康経営や働き方改革を推進するスリープテック企業、ニューロスペースCEOの小林孝徳だ。同氏は「睡眠不足は日本が抱える社会問題のひとつ」と警鐘を鳴らす。

今回は、同じように睡眠の重要性を説く働き方改革コンサルティング企業「ワーク・ライフバランス」の小室淑恵と対談。睡眠と働き方改革の関連性について語った。

睡眠不足は、働き方改革の足かせになる


小室淑恵(以下、小室):まず、小林さんが「睡眠」を課題視するようになったきっかけから教えてください。

小林孝徳(以下、小林):前職の勤務環境です。IT系の企業で営業やWebマーケティングを担当していたのですが、当時、平日1日あたりの睡眠時間は4時間程度。

いま思うと……自殺行為でしたね。そんな生活を続けていると肉体的にも精神的にもおかしくなってくるんです。「これやっといて」と10秒前に言われたことを忘れてしまう。上司のアドバイスに対して、まるで人格を否定されたかのように被害妄想を膨らませてしまうなど、はっきりいって“うつ病寸前”でした。

「このままではいけない」と思い、睡眠について調べてみたんです。すると、日本だけでも睡眠の問題によって3.5兆円の経済損失が生まれていることがわかりました。ところが、睡眠に関するビジネスについて調べてみたら、枕や布団といった寝具に関するものと、不眠症や睡眠時無呼吸症候群に関する医薬品や医療機器に関するものしかないんですよね。ダイエットにおける体重計のように、睡眠をセルフケアする仕組みがないことに気付きました。

それに、いくらビジネスとして整備しても、大前提として世の中がビジネスパーソンたちの睡眠を尊重にする文化がないと根本的に変えていくことはできません。「だったら自分が睡眠を大切にする文化をつくるしかない」と一念発起し、2013年12月に“スリープテック”を手がけるニューロスペースを立ち上げました。

小室:「文化をつくる」ってどういう状態を指しているんですか?

小林:そうですね……小室さんの睡眠時間はどのくらいですか?

小室:早ければ毎日22時には寝ていますね。子どもたちを21時15分頃から寝かしつけて、ちょっと本を読んで、朝は5時ぐらいに起床しています。ごくたまに溜まっている家事をこなして遅くなっても23時には寝ていますね。

小林:こういうやり取りを日常的にできるようにしたいんですよね。それが文化だと思っています。
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文=田中嘉人 写真=帆足宗洋

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