「寝不足自慢」にピリオドを。働き方改革を後押しする睡眠の可能性

(左)ワーク・ライフバランスの小室淑恵 (右)ニューロスペースCEOの小林孝徳


なぜ男性の育児休業を義務化すべきなのか


小林:小室さんは社長業と育児を両立されていますよね。時間が限られていると、大変な想いをしたこともあったんじゃないですか?

小室:そうですね。私は産後3週間で起業したのですが、実は15年前の起業当初は、「暇さえあれば仕事しよう」という気持ちでした。

授乳のタイミングでどうしても深夜に起きてしまうので、「どうせ次の授乳時間に起きるし」とそのまま深夜にパソコンを開いて仕事をしていたんです。でも、社内メールできつい口調でレスポンスしていることに気づいて。最も危機感を覚えたのは、メンバーに送ろうとしているメールをお客さまに送ってしまったこと。もう致命的ですよね。それからは夜中に仕事を再開することは辞めました。

さらに、子育てにも、ものすごくマイナスなんです。「寝かしつけてから仕事をしよう」と思っていると、寝かしつけのときの気持ちが「早く寝ろー!!!」なんです(笑)。「どうか寝てくれ、私に早く自由時間をくれ、早く仕事をさせてくれ」という気持ちでトントンしても、絶対に寝ないんです。なんなら子どもは「絶対に寝ませんけど?」と爛々とした目をして、、最終的にこっちが根負けして寝落ちしてしまうので、目覚めたときには「寝てしまった、、、あれもこれも出来なかった、、」の罪悪感でいっぱい。

そうすると、子育てがすごくネガティブになるんですよね。こういうスパイラルから抜け出したくて、もう思い切って子どもより先に寝るようにしたんですよ。「もう、ママ眠いから先に寝ちゃうね!」って。そうすると、「母親がいなくならない」と安心するのか、ものすごく寝つきがいい。子どもが眠らないのは不安を感じていたからだと気付きました。その頃まではわたしも子どもも相当不安定だったと思いますが、私が思い切って寝ることにしたらそれがすごく改善されたんです。



小林:わたしも反省点は多々ありますね。子どもが生まれたばかりなのですが、わたしが起業家だから妻としては絶対に邪魔してはいけないと思ってしまったみたいで、夜中に子どもの目が覚めても「あなたは仕事があるんだから寝て」と妻ひとりで頑張ってしまったんです。

小室:わたしがいま男性の育児休業を義務化したほうがいいと盛んに話すのは、そこなんです。いくら夫と育児をシェアしようとしても、夫には明日仕事があると思うと妻はすべてを引き受けてしまう。「明日の会議で居眠りしちゃったらいけない」という気持ちになって、夜中も2時間おきの授乳がつらいとか、そういうことはすごく言いづらいんですよね。なんなら「子どもがうるさくてごめんね」とすら思って、あなたは別室で寝てね、と言ってしまう。

だから、一度「俺は2週間育児休業を取る」と言ってくれたら、どれだけ楽になるか。実は、産後の妻の死因の1位は「自殺」なんです。その要因が「産後うつ」です。産後うつのピークは産後2週間〜1ヶ月なので、ホルモンバランスを整えるためには睡眠時間がすごく大事。だから小林さんには睡眠のプロだからこそ「家庭内のトータル睡眠時間が上がることが大切だ」と提唱してほしいですね。
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文=田中嘉人 写真=帆足宗洋

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