喫煙者の重症化リスク高い新型コロナ、今から禁煙でも効果はある?

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新型コロナウイルス(SARS-CoV2)の感染拡大が続くなか、ニコチン依存症に関する研究の第一人者が「今こそ禁煙、または喫煙量を減らすための努力をすべきときだ」と警鐘を鳴らしている。喫煙者は喫煙をしない人に比べ、SARS-CoV2に感染した場合の重症化リスクが非常に高いとみられているためだ。

米ミネソタ州ロチェスターにあるメイヨー・クリニック・ニコチン依存症センターのJ.テイラー・ヘイズ所長は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかった喫煙者についてのデータは、現時点ではそれほど多くあるわけではない」と指摘した上で、重症化した人の非常に多くが喫煙者だとみられると話す。

喫煙者に重症化のリスクが高いことを示す証拠の一つとなるのは、2月に米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表された論文だ。中国のCOVID-19の患者1099人について調査したところ、重症化した患者173人のうち、16.9%が喫煙者、5.2%が以前に喫煙していた人だったという。

また、人工呼吸器が必要になった人、集中治療室(ICU)への入院が必要になった人、死亡した人のうち、25.5%が喫煙者だった。一方、重症化せずに済んだ人のうち、喫煙者が占める割合はこの半分以下にとどまっていた。

その他のコロナウイルスが原因の感染症に関する研究からも、喫煙者は非喫煙者に比べ、重症化するリスクが高いことが示されている。韓国で感染が拡大した中東呼吸器症候群(MERS)の患者を対象とした小規模な調査でも、致死率は喫煙者の方が高かったことが分かっている。

喫煙者には、MERSコロナウイルスに感染した場合にはDPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ4)と呼ばれるタンパク質(受容体)の発現がみられる。また、COVID-19の場合には、ACE-2(アンジオテンシン変換酵素2)タンパク質の発現がみられる。どちらの受容体もウイルスが肺の細胞に侵入することを可能にするもので、肺をウイルスからの攻撃を受けやすい状態にしていると考えられている。

喫煙者が重症化しやすい原因についてヘイズ所長は、「喫煙者が呼吸器疾患にかかれば全般的に重症化しやすいことは、かなり以前から分かっている。その原因も、いくつかは特定されている」と語る。

「粘液性の分泌物が気道内に停滞しやすくなり、肺から感染性粒子や分泌物を排出する繊毛の機能が低下するためだ。また、喫煙は気道の炎症を引き起こし、呼吸器疾患にかかった場合には、症状が悪化しやすくなる」

今からでは遅いのか?


では、喫煙者が今からたばこをやめても、または喫煙量を減らしても、もう遅すぎるだろうか?ヘイズ所長によれば、そのようなことはない。「喫煙をやめれば、肺の状態は短期間でも改善するとみられている」という。

「現時点で肺に重度の障害がない喫煙者の大半は、短期間のうちに健康状態が改善されると考えられている。ただ、COVID-19などの重症疾患にかかれば、回復のチャンスは少なくなる」

「現在の状況を、機会と捉えることもできるはずだ──危機をチャンスに変えることもできるということだ。これまで禁煙するきっかけを探していたのであれば、今こそ始めるべきときだ」

なお、ヘイズ所長によれば、電子たばこ、加熱式たばこを使用している人については、現時点ではデータが得られていないという。

編集=木内涼子

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