キャンリスは、「私たちはトックに対して、同社のシステムを何とか工夫しようとしたけれどもできなかったと話した」と説明する。「私たちはシアトルの一般市民であって、プログラマーではないからだ。トック側は、私たちのアイデアを聞くと、すぐにチームを招集して24時間体制で取りかかり、多くのレストランが利用できるシステムを開発してくれた」
トックの最高経営責任者(CEO)ニック・ココナス(Nick Kokonas)は、キャンリスの提案に共感。即刻チームにはっぱをかけて、テイクアウトの注文に応じたことのないレストランでも簡単に設定できるような、デリバリーとテイクアウト用プラットフォームの開発に着手した。
トックが深いつながりを持っているのは、シカゴのミシュラン3つ星レストラン「アリニア(Alinea)」や、サンフランシスコのフレンチレストラン「アトリエ・クレン(Atelier Crenn)」のような有名店だ。そのため、急激な変化のさなかにあるレストランを支援することに重点を移して考える必要があった。
トックのチームは、昼夜を問わず1週間働き詰め、レストランがこれ以上、営業を停止せずに済むようなプラットフォームの立ち上げを目指した。
ココナスは、「トックの既存データ構造とバックエンドを活用し、新しいプラットフォーム丸ごとを1週間で開発した。ただし、そのあいだチームは、寝る暇も惜しんで休みなく働いた。店の営業停止が間近に迫っていると予測していたからだ」と話す。「イタリアの様子を目にして、アメリカも同じ事態に陥ると気づくのは難しいことではなかった」
シンプルで使いやすいプラットフォームへの需要が増大している現在、すでに数十人のスタッフが稼働して、飲食店側を直接サポートしている。3月16日(現地時間)だけでも、全米各地のレストランから200件を超えるサポート依頼があった。その多くは、トックのプラットフォームを初めて使う飲食店だ。
「ポイントは、通常の予約システムと同様に、レストラン側がスムーズに使えるようプロセスを簡素化したところだ。メニューのアップロードも必要ないし、複雑なサービス利用条件も必要ない」とココナスは続けた。「料理に専念して、あとは売るだけだ」