ビジネス

2020.05.18

スタートアップは選別の時代に 「幸せな勘違い」を原動力に進め 

スペースマーケット 重松大輔氏(写真左)と弁護士ドットコム 元榮太一郎 (写真右)


重松:前職でIPO(株式公開)を自分の目で目撃したんですよ。2006年にフォトクリエイトに転職して、2013年に会社が上場したのですが、それまでの流れをひと通り見て、さらにはそれこそ元榮さんとか、クラウドワークスの吉田浩一郎さんといった昔からの友人も起業から上場していましたので、「僕にもできるんじゃないか」と思って。いい意味での「勘違い」というか。

元榮:その勘違いって非常に大事なポイントですよね。大学受験もそうじゃないですか。周囲がみんな東大に行くような、麻布、開成、武蔵のような高校に通っていたら、「パッとしなかったあの先輩でさえ受かっているんだから、オレでも行けるんじゃないか」と、考えたりする。

重松:「幸せな勘違い」というやつですね。

元榮:そういった妄想力とか勘違いは重要だと思います。

重松:目の前で上場を見ていると、パブリックカンパニーになって、取引先も、当然社員もみんな喜んでいるのに併せて、周囲からの信頼も変わってくるので、これは面白いなと思ったんです。

たぶん自分も、奇を衒わずに、教科書どおりにやれば上場できるんじゃないかと幸せな勘違いをしたんですよね。

海外のビジネスモデルを日本に輸入


元榮:スペースマーケットのビジネスモデルの着想はどこからですか?

重松:2013年頃、海外のマーケットを研究していたんです。当時はエアビーアンドビーとか、ウーバーなどが注目され始めたタイミングだったんです。

それらのサービスを見て、これは日本にも「CtoC」の流れが絶対に来ると思い、国内で空いているドメインがないかと調べました。貸し会議室などを提供するティーケーピーさんなども当時から伸びていましたし、空き家問題にもフォーカスが絞られ始めていたし、人口もこれから減少していくし。今後、空き家や空きスペースの問題に注目が集まるはずだ。遊休スペースの活用ビジネスは来るなと考えたんです。

元榮さんは、弁護士ドットコムのアイデアをどのようにして生み出したのですか?

元榮:「あったらいいな」という思いの粒度を、少しずつ高めていったのです。学生時代に弁護士に相談したいことがあったんですけど、非常に苦労したんです。弁護士ってどこにいるのか、いくらかかるのか、わからないことだらけだった。そのときの経験をもとに、あったらいいなと思うものをつくったのが弁護士ドットコムです。ビジネスモデルを見つける際、そういった原体験をもとにするというのもひとつのやり方かなと思います。

重松:そうですよね。ビジネスのアイデアを見つけるには、いろんなやり方があると思います。僕の場合は、海外でこれから急成長するジャンルってなんだろうというところからのスタートでした。

元榮:タイムマシンモデル、いわゆる海外で成功した事例やサービスをいち早く日本に持ち込むやり方ですよね。

重松:これだけ世界が発展したいまでも、最新のモデルはアメリカから数年遅れて日本へと入ってくる。そういうサービスのなかから、マーケットサイズがあり、これから来ると確信できるものを選んだんです。
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文=元榮太一郎

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