会見に同席した厚生労働省クラスター対策班の西浦博・北海道大学大学院教授(社会医学分野衛生学)は、夜間から早朝にかけて、接待が伴うナイトクラブなど飲食店での感染が疑われる事例が相次いでいることを指摘。東京都の積極的疫学調査に基づき「患者の行動履歴からある程度確度が高い」として「夜の街での感染を止めることで制御できる可能性がある」と述べた。ちなみに都内では性風俗店やパチンコ、麻雀などでの感染拡大は現時点では確認されていないという。
なお、自粛による打撃を受けている特定業種への経済対策については、小池都知事は「国の対策がベースとなり、都として独自にどう上乗せできるか考えたい」と話し、この会見で具体案はなかった。
3月26日に撮影された東京の街。飲食店は営業しているものの寂しげだ(Getty Images)
都内で入院患者のため4000床確保へ
今後の患者数の増加を見据えて、小池都知事は入院患者のための医療体制の確保についても言及した。現在都内では500床確保されているが、最終的には4000床の確保を目指す。東京医師会を通じて、一般の病院への受け入れを求めて徐々に病床を増やしたい考えだ。
なお、軽症患者などについては今後、自宅や宿泊施設への待機もできるように東京都と国が協議して体制を整備していくとした。軽症患者とはどんな人を指すのか。
同席した国立国際医療研究センター病院・国際感染症センター長の大曲貴夫医師は、あくまで「個人の見解ですが」と前置きして、「新型コロナウイルスの症状として微熱は多いです。また呼吸器系ですので、喉の痛みや肺に症状が出ますが、呼吸が苦しくなく全く異常がないというケースがあります。これを軽症あるいは中等症と言えるのではないでしょうか」と語った。だが、高齢者の場合はさらに慎重に見極める必要があると述べた。
感染爆発(オーバーシュート)については、小池知事は「緊急事態宣言を出すまでにはギリギリで、重大局面」と述べたが、記者からの質疑で西浦教授は「増加傾向は事実だが、爆発的な増加は確認していない」と、記者会見を締めくくった。
同日夜、東京オリンピックの大会組織委員会の記者会見も開かれ、1年程度の延期とされていたオリンピックは2021年7月23日に、パラリンピックは21年8月24日に開幕することを発表した。小池都知事は会見でこれについて触れ、「そもそも新型コロナウイルスに打ち勝たなくてはなりません」と笑みを見せた。
オリンピックの開催時期は決まったとしても、多くの人は4月から今後の見通しがつかないまま、不安な気持ちで新年度を迎えることになるだろう。東京都を中心とした「都市封鎖(ロックダウン)」の時期を巡っては、デマも流れているのが現状だ。不確かな情報に翻弄されないように冷静な判断が求められている。