起業家たちの「頭の中」

トレジャーデータ 芳川裕誠

多種大量なデータを即時に収集・分析するクラウドベースのデータ管理基盤を構築し、300社以上のデータマネジメントをサポートしてきたトレジャーデータ。同社を2011年にシリコンバレーで創業した元CEO 芳川裕誠氏に、アメリカと日本のスタートアップの違い、SaaS型ビジネスの成功法などについて聞いた。

※本記事は2019年4月に掲載したインタビュー記事に加筆・修正を加えております。

創業初期からKPIを徹底的に可視化する


──「経済合理性」を見極める上で、創業初期からKPIを綿密にチェックされていたのでしょうか?

最初からKPIはかなり精密に追いかけていました。

レベニューグロース(売上成長率)、グロスマージンパーセンテージ(粗利率)、チャーンレート(解約率)などのKPIを最適化していくことが、SaaS型ビジネス経営の正攻法です。

我々が特に重要視していたKPIを3つご説明しましょう。

1つ目は「LTV(顧客生涯価値)/CAC(顧客獲得単価)」。要はユニットエコノミクスのKPIです。

SaaS型ビジネスは積み上げ型のビジネスなので、短期的な売上ではなく、「LTV」でエコノミクスを見極めることが大切です。この見極めができるからこそ、開発投資の判断を正確に行なうことができます。

次に重要視していたKPIは「CAC Payback(投資回収期間)」です。

例えば顧客ごとのMRR(月次収益)がグロスマージンベースで$10Kで、この顧客を獲得するCACが$150Kのケースを考えると、「CAC Payback」は15ヶ月となります。

当然ながら、この「CAC Payback」が短いほど経営の安定性は増していきますが、短すぎる「CAC Payback」は営業・マーケティングへの投資が足りないことも示唆します。

最後の3つ目は「ネガティブチャーン(逆離脱率)」というもの。現在の顧客ベースによる売上が、1年後どう変化しているかを表す指標です。

例えばある時点で顧客100社、売上$1Mの状態だったとして、1年間で20社離脱して顧客80社になったけれど、その80社のアップセルに成功して売上が合計$2.5Mになっている場合は「ネガティブチャーン250%」となります。

この指標が100%を超えているということは、新規顧客を開拓せずとも売上が伸びていく状態です。SaaS型ビジネスの利益率を高める上で大切な指標となります。

もちろんKPIの最適化方法には無数の答えがあります。会社の状況や外部環境に合わせて自社にあった解を模索していくしかありません。

しかし、繰り返しになりますが、最初のゼロイチフェーズでビジネスの経済合理性をしっかり確立させること。これが経営者最大の見せ場であり、最も難しい部分だと思います。

文=山崎満久 提供元=Venture Navi powered by ドリームインキュベータ

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