世界で新型コロナ封じ込めは急務。効果的なワクチンの見通しは?

ブラジル南部のミナス・ジェライス連邦大学で新型コロナウイルスのワクチン開発の試験を行う研究者。世界各地で研究が進められている。(Photo by Pedro Vilela/Getty Images)

経済的影響は是正される可能性も


約8,000名が感染し774名が死亡した2003年のSARSの大流行では、世界全体の経済的影響は推定500億米ドル。そして、200名が感染し38名が死亡した2015年の韓国でのMERSの大流行では、その経済的影響は85億米ドルと推定されていました。

新型コロナウイルスの経済的影響は、すでにこの2つの感染症を上回っています。ウォール街も世界的な急落に同調し、米国企業のS&P 500指数は11.5%下落、2月24日の週は2008年の世界金融危機以降、最悪の一週間となりました。中国は、春節以降1か月、事実上、経済的に封鎖された状態であり、世界的な製造業への波及影響も出ています。

数々の賢明な感染拡大予防策は理にかなってはいるものの、企業や政治家もパニックに陥りやすい状況となっています。サプライチェーンへの実際の影響は、石油のような一次産品から、ジャストインタイム生産システムの自動車製造において問題となっているような供給停止に弱いサプライチェーンまで、あらゆる分野や資源に影響を及ぼしています。

2008年の世界金融危機は何かを解決したわけではなく、多額の負債と資産バブルを抱える世界経済の脆さという負の遺産をもたらしました。世界経済フォーラムのグローバルリスク報告書2020年版でも指摘されているように、経済システムにはいくつもの転換点があり、世界的危機に対する経済的影響は、是正されていく可能性があります。

null
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界で取られた経済的な景気刺激策 ( イメージ: The Economist )
次ページ > 警戒を続け、拡散のコントロールを

文=John Scott, Head of Sustainability Risk, Zurich Insurance Group

タグ:

連載

新型コロナウイルス特集

ForbesBrandVoice

人気記事