「無症状比率」とは、新型コロナウイルスに感染していながら、症状が表に出ないまま、無意識にウイルスを拡散している可能性のある人々の割合である。もしその数字がわかればおおいに役立つはずだ。ウイルスがどこまで広がっているのか、感染拡大をどう防げばよいのか、致死率はどの程度なのかを教えてくれるからだ。
実は、最近発表された二つの科学研究がこの比率の精度をさらに高めている。むろん完璧ではないから、鵜呑みにするのは避けたほうがいいだろう。それでも現3月18日の時点でベストの数字であるのは間違いない。
その一つが、京都大学(水本健治、加賀谷勝史)とオックスフォード大学(アレグサンダー・サレブスキ)、ジョージア州立大学(ジェラルド・チャウェル)のチームによって行われ、先頃ユーロサーベイヤンス誌で発表された。
(ダイヤモンド・プリンセス号船内に隔離された乗客たち:Getty Images)
研究チームはプリンセス・クルーズ社の大型客船、ダイヤモンド・プリンセス号で起きた集団感染のデータを分析した。この船の上で起きたことは、科学者に新型コロナウイルスの本質を理解する貴重な機会を与えてくれる。2月5日に乗船者の中から陽性者が出たあと、3711名の乗員乗客を乗せた同船は隔離状態に置かれた。最終的に、2月21日までに検疫官、看護師、厚労省の職員各一名を含む634名がウイルス検査で陽性が確認された。
クルーズ船のデータが公開されると、研究チームはクルーズ船を統計学的にモデル化した。その際、データにあるギャップを埋めるために、統計モデルを使う必要があった。たとえば、ウイルス検査が行われた回数は3063回だったから、乗員乗客全員が検査を受けたわけではない。そうした点を踏まえたチームの分析によって、無症状の感染者のいる確率は、95%信頼できる範囲、いわゆる95%信頼区間が15.5%から20.2%であることから、17.9%という数字が導き出された。