私たちはこうして、家にこもりながらも、外の世界とつながることのできるデジタルな素材を試しつつ日々の活動を続けているのだから。
そのなかでも重要な役割を果たすことになったのは、オンラインでのビデオカンファレンスのプラットフォーム「Zoom」だ。
「Zoom」誕生の物語
2014年に登場したアプリ、「Google Classroom」と同じように、「Zoom」の登場自体は数年前だが、世界的知名度を獲得したのは最近だ。
モバイルインテリジェンス企業アップトミア(Apptomia)によると、3月11日時点で世界で34万3千人がこのアプリをダウンロードし、アメリカだけでも6万人が計上されているという。わずか2カ月前、世界で9万人、アメリカで2万7千人という数字を記録していたこのアプリは、今やアップルストアで最もダウンロードされた無料アプリのランキング上位を位置することになった。
それは、2011年、中華系の情報エンジニア、エリック・ユアンがカリフォルニアのサン・ジョゼでビデオカンファレンスに特化した企業、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(Zoom Video Communications)を設立した時期にさかのぼる。当時41歳だったユアンは、シスコシステムズのビデオカンファレンスアプリ「WebEx」のプロジェクトを率いることで得た10年間の貴重な経験があった。
このアプリのパフォーマンスに満足した彼は、当時の重要なポストを放り出して別の道を模索し、新しいプロジェクトに向けて動き出すことを決断する。現在のマーケットでの競争率を見ても、それによって生じるリスクはわずかではなかったものの、ユアンには先見の明があった。ここ数年、テクノロジーの利用頻度が高まり続け、投資額が増えるなか、2017年1月、ズーム社は10億ドルの価値を持つユニコーン企業の仲間入りを果たす。
だが、2019年こそが岐路となった年だ。4月に上場を果たし、160億ドル弱の評価額を受け、創業者ユアンは資産家となる。現在、彼の資産は、フォーブスによると推定50億ドル相当といわれている。