取り扱うのは教科ごとの授業に使う教材ばかりではない。アーテックの商品カタログを見ると、運動会・発表会グッズや防犯・防災グッズまでずらりと並び、その領域は学校生活のあらゆるシーンに広がっている。例えば、運動会のダンスで使うチアポンポンなど、従来であれば、先生たちが放課後に手づくりしていたものを商品化し、ダンスの振り付けの動画も合わせて提供する。自作より安く、多忙な教師の労力を減らすメリットは広く受け入れられた。
子ども向けのプログラミング スクールも全国1500箇所で運営。主催する国際ロボットコンテスト決勝大会には、海外を含めて約55チームが参加した。
国や教育委員会が策定した方針にのっとるだけでなく、現場の声を傾聴する。だから、次に求められる教材が何かを、競合他社に先んじて察知できるのだ。商品を生み出す企画室には、275名いる従業員のうち、約50名が所属。毎年、20名ほど入る新卒社員も、最初は全員が研究開発チームに配属され、実際の商品開発に携わるという徹底ぶりだ。
市場に先駆けてプログラミング教材を展開
こうしたニーズ探索の最新の成果が冒頭にあげたプログラミング教材である。国内では20年度に小学校で必修化されるプログラミング教育だが、アーテックは国の施策に先んじて、14年から「アーテックロボ」を展開してきた。力を注ぐことになるきっかけは、海外の教育現場から吸い上げた声にあった。アーテックは09年、日本の教育文化を広めることを目指して、海外進出を開始。当初は理科教材を主軸として販売していた。
「例えば、日本の学校では、理科で使う磁石セットなどを、教材費を徴収して各生徒に持たせます。こうした慣習は日本独自のもので“ハンズオン”といいますが、ひとりひとりの手の上に乗せて教えることによって、学習効果が高まるのです」教材を使ったハンズオンの教育は、実際、多くの国で驚きをもって迎えられ、一定の評価を受けた。