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乳がんという「転機」

北風祐子さん(写真=小田駿一)

新卒で入った会社で25年間働き続け、仕事、育児、家事と突っ走ってきて、「働き方改革」のさなかに乳がんに倒れた中間管理職の連載「乳がんという『転機』」第15回。

大事なのは、もっと話したいと思うかどうかだ


2017年8月14日。息子が2週間の米国短期留学から帰ってきた。私の乳がん手術が決まると、今年の夏休みはこのままだとどこにも行けないと察知したのか、自分で短期留学のパンフレットを見つけてきて、「アメリカに行きたい」と言い出したのだ。自発的に言い出したことに私も夫も驚き、たいしたもんだ、と費用もろくに見ないで即OKを出したのだった。

ちなみに息子は留学を申し出た頃から、「やりたいことがたくさんある」「1日24時間じゃ足りない」が口癖の、スーパーアクティブ有言実行男になった。

帰国直後の息子の第一声は「短すぎた」。もっと向こうにいたかった、ということだ。いつかアメリカで暮らしたい、という夢への第一歩なのかもしれない。とにかく無事でなによりだった。

短期留学の最後に、英語で感想文を書いてきたそうだ。こう書かれていた。「大事なことは、英語をうまく話せるかではなく、もっと話したいと思うかどうかだ」。うまいか下手かはどうでもよくて、話したいことがあるかどうかが問われている、と感じたらしい。

「50%は自分から話しかけて、話題を投げかけた。全体の3分の2に話しかけて、5分の3と友達になった。特に、ポーランド人、フランス人、中国人、ロシア人の高校生と仲良くなったよ」。えーと、15分の10に話しかけて、15分の9と友達になれた、ということか。

息子にとってはかなりチャレンジングな体験だったようだ。海外への強い憧れは去年天国へ旅立った「じいじ」と似ているのかもしれない。昭和一桁世代だったじいじは、その昔、海外へ行きたいという理由で商社マンになった。独立してからも、おじいさんになってからも、海を渡って仕事をしていた。いつかじいじのように、世界中で仕事ができるといいね。

息子の口からは、次々と夢が飛び出す。その夢を聴かせてもらえるだけで、私は元気になる。

夢は、抱いてこそ叶う。Enjoy your life!

文=北風祐子、写真=小田駿一、サムネイルデザイン=高田尚弥

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